果物とお茶と『荒涼館』の午後

昨日の夜、押入れの本の入った段ボール箱の最後の5箱のうち大きな1個を開けたらディケンズと池波正太郎の文庫本がびっしり入っていた。この二人の本は処分できないなと部屋の奥に片付けた。今日はその中から『荒涼館』を探してエスターの純情にひたることにした。午後の楽しみ。わたしがディケンズの作品中もっとも好きなのがこの『荒涼館』である。

1989年に出版された本だが分厚くて4冊ある。お金がないしと躊躇しているうちに日にちが経った。忘れてしまったままだったが、読みたいと話したり書いたりしていたようで、数年前にイギリスに転居する人がディケンズの文庫本をタダでくれるという話が舞い込んだ。運賃だけで大量の文庫本をいただいて幸せ。もちろん『荒涼館』もあった。ものすごくうれしくてしゃべりまくり、書きまくって自慢してすぐに読み上げた。思ってたよりもずっとよかった。ちょっと『ジェーン・エア』に似ている。

主人公のエスターはまじめで誰からも好かれる少女であるが、大変な境遇の中でまともに生きようと努力し報われる。彼女は実はデッドロック準男爵夫人ホノリアの私生児であった。
物語の最後のほうで荒涼館の持ち主ジョン・ジャーンディスに荒涼館の主婦にならないかと結婚を申し込まれるが、エスターには愛する人ができてついにその人と結婚する。そして荒涼館の主婦になり、その後は幸福な毎日を送る。

梨とリンゴと柿、そしてコーヒーとビスケット。おやつと読書の午後は穏やかに暮れていった。