久生十蘭『十字街』が出てきた

出てきたっていっても、30年も前にそこへ置いいたのは自分だから驚くことではないが、好きな作品が手元にあるのがすっごくうれしい。
久生十蘭『十字街』が朝日新聞夕刊(1951/1/6日-6/17)に連載されたとき、わたしはこどもだったが毎日夕刊の配達が楽しみだった。まだ見ぬ(いまもまだ見てないが)パリに生きる主人公たちのことをどきどきしながら読んでいた。エキゾチックな挿絵も素敵だった。

それから何十年も経って三一書房から久生十蘭全集が出るのを知り無理して手に入れた。1970年だから約20年後だがすごくおもしろく読んだのを覚えている。その頃は本を買う量が半端でなく好きな作家の全集を揃えることに夢中になっていた。

結局、久生十蘭の全集は「顎十郎評判捕物帳」ぐらいしか読まずにさっきまで積んであった。さっきもう読むことはないなと思って捨てる本の中に入れた。『十字街』だけちぎり取ってファイルした。いまは読みたい作品があれば、久生十蘭コレクション (朝日文芸文庫)が手に入る。生きていれば海野弘さんの解読も買って読める。(久生十蘭『魔都』『十字街』解読 海野弘 右文書院)
ああ、本棚を調べてよかった。まだ出てきそう、ほとんどゴミになるけど宝が隠れているかも。