アニー・デュプレーの本『黒いヴェール』

ツイッターでアニー・デュプレーという名前をちらりと目にしたとき、あれっと思った。この人のこと知ってるはず。フランスの女優らしいからきっとそうだと勝手に決めた。検索したらジャン・リュック・ゴダール監督の『彼女について私が知っている二、三の事柄』 (1966)、アラン・レネ監督の『薔薇のスタビスキー』 (1973)に出ている。どっちの監督の作品もよく見ているほうだが、この2本は見ていない。『女性たち』 (1969)なんかブリジッド・バルドーとモーリス・ロネだが日本未公開である。全然思い違いしていたと気がついた。

子供の頃に見たフランス映画を思い出してみようとしたが思い出せない。10歳年上の二番目の姉が映画好きでよく連れて行ってくれた。ボーイフレンドと行くための親への目くらましに使われたみたいだが、わたしひとりで映画館に入るには3年くらいの間があったから、ありがたかった。映画を見ること、映画雑誌を見ることを教えてもらって、その上に映画を見たらストーリーをしゃべることも教えてもらった。映画と同時に歌舞伎と文楽と新派と新劇を見におしゃれして出かけることも教わった。ただし姉がおしゃれするだけでわたしは相変わらずみじめったらしかったが。あんたも大人になったらわたしみたいにできるといわれました(笑)。ボーイフレンドには近所の子といってました(笑)。

さて、アニー・デュプレーは思っていた人と全然違った。アニーは間違いないと思うんだけど。『黒いヴェール』は美しい写真の入った本でずっしり重い。最近は本を捨てるのに専念しているから、地震対策にも重い本はいらない。でも重くても美しい写真がたくさん入っているから本棚に並べよう。
(北代美和子訳 リュシアン・ルグラ写真 文藝春秋 1996刊)