疎開少女の友『小公女』と『イエロー・エンペラー』

『小公女』は姉から譲られた本で小学校へ行く前から読んでいた。いまも大好きでときどき読む。逆境から抜け出して幸せになるところがいまだに好き。夜中に物音で目を覚ましたらベッドには暖かい毛布がかかっており、暖炉が燃え、食事の支度ができている。夢かと触ってみるとみんな本物だった。戦争中のこどもにはありえないことだが、夢を見るのは自由だ。

『イエロー・エンペラー』は、戦後になって出た村岡花子訳の文庫本『リンバロストの乙女』上下を大切に持っている。『イエロー・エンペラー』にわたしがあんまりこだわるので読書会に来ていた図書館員が調べてくれたら千里の児童図書館にあるのが判明。わたしは千里まで行って懐かしの本に再会できた。コピーをとってもらって(コピー代6000円払った)大事に保存してある。3年生の誕生日に父から贈られた本で、いま読むと翻訳が下手くそでしかも抄訳だが、空想でふくらませて主人公エルノラに憧れていた。みじめな疎開少女のわたしはこの本で自立することを学んだ。無神経な田舎の大人や子供の言葉がつきささったが、黙って耐えることも覚えた。孤独に桑の実を食べながら。

疎開するにあたって父からたくさんの本を田舎へ送ってもらったが、ほんとうにわたしは本で命をつないだといっていい。これも大事な人形とともに物語を紡ぎながらカイコのガサガサ桑の葉を食べる音を聞きながら眠った。