夜なべ(わたしの戦争体験記 37)

「かあさんが夜なべをして手袋編んでくれた」って歌がわりと好き。うたごえ運動やってるときによく歌った。うちの母もよく夜なべをしていたが、手袋を編むより兄たちの靴下のかかとの修理に追われてた。とにかく母は忙しくて歌のような情緒などひとつもありゃあせんのだった。

まだ母が田舎へ来ていなかったときのことだが、叔父さんは晩ご飯(毎晩 おほうとう)がすむと夜なべをしていた。囲炉裏の横の縄ない機で縄をなったり、四角い道具でむしろを編んでいた。縄はぐるぐる巻いて積み上げてあり、出来上がったむしろはゴザや畳のようにして重ねてあった。わらじや藁草履を両手で素早く足も使ってものすごい速さで仕上げる。とにかくそれらを作っていく工程が手早い。飽きずに見ていると「いいかげんに寝ろ」と叱られた。でも可愛げのない子供でもうっとりと眺められてうれしかったみたいだ。

朝早く起きて蚕の餌用の桑の葉を収穫してきて蚕たちに餌をやり、その後に朝ごはん、それからあとは百姓仕事、家に帰らず昼ご飯。そのご飯を笊に入れたのを畑までよく運ばされた。ひっくり返さないように気を入れて運んだものだ。
(※昨日まちがって「手袋」を「靴下」としていたので今日10日に「手袋」と訂正しました)