四方田犬彦『ハイスクール 1968』

楽しい読書だった。さきに『母の母、その彼方に』を読み終わっているのだが、高校生時代を描いた本書のことを先に書くことにした。手に入れたのも先だったし。
ちょっと前に書いたけど、こんなにたくさん本を読んだり買ったりしているのに四方田さんのことを長いこと知らなかった。2年ほど前に『ユリイカ』の吉田喜重監督特集に書いておられるを読んでええこと書いてると思ったのが最初である。彼の映画の本を買おうと思いながら買ってなくて、新潮社の『波』4月号に出ている紹介記事とインタビューを読んで、こりゃ買わねばと思った。
買う前に著書を調べたら100冊もあって、その中で気に入ったタイトル『ハイスクール 1968』(2004)を中古本で買った。読み出したら相方にとられ、わたしは『母の母、その彼方に』を読んでいたのだがこれがすごく気に入った。それからもどってきた本書を昨日今日で読んだ。これもまたおもしろくて、なんでいままで知らなかったんだろうと不思議でしかたない。

四方田少年は1968年4月に東京教育大学農学部附属駒場高等学校に入学した。その前の年に大阪の箕面から東京杉並区に引っ越してきたのだ。西洋風の家の庭には芝生が植えられ、薔薇のアーチがあり庭の隅の井戸からはこんこんと水が湧き出ていた。少年は2階の一室を自分だけの部屋として与えられた。窓からは隣家との境界に欅の木と池がよく見えた。
時代はベトナム戦争のさなかで、ボリビアではチェ・ゲバラが処刑され、シナイ半島はイスラエルの奇襲作戦で占拠されていた。
日本はアメリカ、西ドイツについで世界第3位の国民総生産を誇り、米はあまるほど収穫されピアノの生産台数は世界一に達していた。

少年が振り分けられたクラスの半分ほどは附属中学組、その他は厳しい受験勉強をして合格した生徒たちでなりたっていた。
それからの学生生活と学友たちのことを興味ふかく読んだ。
特に高校紛争について詳しく語られているのが興味深い。
そして、高校生で!! 文学とジャズと映画への傾倒が羨ましい。ビートルズのことも。
(新潮社 2004年2月発行 1600円+税)