アーサー・コナン・ドイル『赤毛連盟』を読んだ

シャーロック・ホームズものがないかなあと青空文庫をさがしたら『赤毛連盟』があった。読むのは二度目である。一度目は小学校5年生のとき父親が古本屋で買ってきた古びた海老茶色の布表紙の文庫本の大きさの厚い本だった。シャーロック・ホームズの物語がたくさん詰まっていて楽しかった。兄たちが読み終わるのを待って手にしたときのうれしさったらなかった。でも覚えているのはこの『赤毛連盟』と『まだらの紐』だけだ。変わった題名だからしっかり記憶されていたんやね。

恥ずかしながらタイトルは覚えていたけれど内容は全然覚えてなかった。赤毛の男性がたくさん道路に並んでいるところは覚えていたが、結末はどうなったのか全然である。今夜70年ぶりで全貌がはっきりした(笑)。
赤毛というのが具体的にわからなくて、のちに少女小説に出てくるきかぬ気の赤毛の少女で納得。まだ『赤毛のアン』は出てなくて『トム・ソーヤーの冒険』も家にはなかった。

50年後くらいに四つ橋筋の交差点で赤毛の外国人とすれちがったことがある。みごとな真っ赤な赤毛で、わたしはしばし立ち止まって見送った。

『まだらの紐』はまだ再読していないけど、蛇が出てくるんだっけ。女の人が依頼人やったかなというくらい。これから読むのが楽しみだ。

アーサー・コナン・ドイル『緋のエチュード』

火曜水曜と2日かけて青空文庫でアーサー・コナン・ドイル『緋のエチュード』大久保ゆう訳(以前は『緋色の研究』)を読んだ。
読み出したら夢中になり読み通してしまったが、読み終わってなんでこれ読んだのかなって疑問がわいた笑。きっかけは「発達障害」の本3冊からドラマ『シャーロック』にいったんだった。いやー おもしろかったなあ。発達障害のシャーロックを堪能した〜 それから青空文庫を探して『緋色の研究』を見つけた。いまは『緋のエチュード』となっている。

なんせシャーロック・ホームズの物語を読んだのはこどものとき、おとなになってミステリファンになっていろいろ読んだが、コナン・ドイルは読んでなかった。本格物やハードボイルドやいろいろ読んでるのに、ホームズは子供向けと思っていたみたい。いますっごく楽しんで読んでほんまの本格物やんかと反省した。

〜第四章から引用〜
ホームズ「事件に関してはここまでだ、博士。ほら、種明かしした手品師は相手にされない。これ以上手の内を見せすぎると、君は僕のことを所詮ただの人と決めつけかねない。」
ワトソン「そんなことないよ。この世界でいちばん、探偵という仕事を厳密な科学にまで近づけている。」
ワトソンの独白 同居人は私の言葉や熱心な口ぶりが嬉しいようで、顔を赤らめた。自分の腕をほめられると弱いということが私にはとうにわかっていた。まるで、綺麗だよと褒められた少女のようだ。

二人が最初に会ったとき、ワトソンに一目でアフガニスタン帰りだねといって驚かせたシャーロック。二人の仲はドラマのハドソン夫人の見方では恋人どうし。
作品ではワトソン博士がホームズとワトソンの物語を書いたんだけど、ドラマではワトソンはブログを書いてアップしている。

『シャーロック』と発達障害

ついこの間だけど、夫が買ってきた香山リカの『「発達障害」と言いたがる人たち』(SB選書)をさきに読ませてもらっていたら、香山さんが岩波明の『発達障害』(文芸春秋)を勧めていたのですぐに買ってきてもらった。わたしは「発達障害」という言葉は常々気になっているが、「発達障害と言いたがる人たち」ではない。甥の一人が自閉症ということもあってずっと気になっている言葉ではある。

香山さんの本を読むのを途中でやめて岩波さんの本に移り「はじめに なぜあの人は「空気が読めない」のか?」を読み出した。なんとまあ、章の最初の言葉がシャーロックなのである。ベネディクト・カンバーバッチ演じるシャーロック。
我が家はずっと前から映画から遠ざかっている。ここで『シャーロック』を見ないでポカンと解説されているだけでいいのか。実は、ベネディクト・カンバーバッチが素敵なことはネットの記事でじゅうぶん知っている。写真だけ見ていても素敵だ。夫に「この映画を見ないで発達障害について語ったらあかんのとちゃう? Amazonプライムで探そう」といった。すぐに見つかったので、月曜日に『シーズン1-1緋色の研究 “A Study in Scarlet” 火曜日(昨日)にシーズン1-2 死を呼ぶ暗号 The Blind Bankerと、シーズン1-3 大いなるゲーム The Great Game の2本を見た。
シーズン1は2010年の作品である。10年前の作品とは思えない新しさと速さ。

携帯電話とノートパソコンが出てくるところでびっくりしたが、会話の中でもシャーロックのサイトとかいうし。ワトソンはブログを書いてるし。製作年はいまから10年前なのだからその当時の最先端がまだ通用している時に見られて幸せだった。

そして、全体のスピードに驚かされた。はやい、はやい、すごく展開がはやい。結着も早い。「わたしら遅れてるぅ」と思わず叫んでしまった。
今日は発達障害の本をもう一冊買ってきてくれた。本田秀夫『発達障害』(SB選書)。

本読みの原点

10日くらい前から久しぶりにドロシー・L・セイヤーズの『学寮祭の夜』を出して読んでいる。わたしの原点の二番目になる本だ。
一番目は『小公女』で、いまでもときどき「青空文庫」で読む。きつい仕事を終え汚い屋根裏部屋でセーラが疲れ果てて眠り込んだ頃合いをみて、隣家の使用人のインド人が入って暖炉に火をつけ、テーブルに食事を並べる。目が覚めたセーラがおどろき喜ぶところが大好き。

セイヤーズのほうは初めての訳本『大学祭の夜』をずっと抱いていたがボロボロになったので今年になってついに捨てた。浅羽莢子による新しい訳の『学寮祭の夜』も文庫本がずいぶん古びたがこればっかりは死ぬまで捨てることはない。何度も読んだ本だからどこを開いても会話やシチュエーションがわかっている。事件そのものよりも、女性と男性について考えさせてくれる本である。

サラ・パレツキーのヴィクシリーズは本箱の大きな部分をしめている。アメリカで最新作が出たが、その前の1作品が訳されていないのが残念だ。英語が読めたらええのになあ。

レジナルド・ヒル『ベウラの頂』は何度読んでも好き

レジナルド・ヒルの作品が好きで翻訳されたものは全部買って読んだ。でも読み出したのが遅かったのが悔しい。
50歳くらいのとき京都三条から歩いて15分くらいの会館でイギリスの作家3人の講演会があると聞いて出かけた。3人とも話しぶりがとてもよくてすぐに好意を持った。ヒルはすでに人気作家で質問する人も熱烈ファンな感じだった。
帰りに受付で本を各1冊買いサインしてもらった。それぞれ読んで気に入ったが3人のうちでいまもファンなのはヒルである。
サインをしてもらったときの情景をいまも思い出すと笑ってしまう。知らない人がサイン本を受け取るうれしそうなわたしの写真を撮っていて、のちのちミステリの会で行き合ったとき渡してくれた。われながらほんとにうれしそうで、知らない人も可愛い(けったいな?)オバハンやなと思って捨てなかったのだろう。

ヒルの作品のなかでも好きなのは『武器と女たち』『ベウラの頂』『完壁な絵画』の3冊。他の作品もみんな好きだが古いポケミスは文字が細かいしこれからもう読めないだろうと処分しこの3冊だけ置いてある。
先日から『ベウラの頂』を読んでいて、ああ、この本はまた読みたくなると思って、「置いとく本」のコーナーへ入れた。

15年前にベウラの山で3人の少女が行方不明になった。担当していたダルジール警視は必死の捜査を続けるが事件は未解決のまま現在にいたる。のんびり休日を過ごしていたパスコー主任警部と妻エリーのもとへ寄ったダルジールは、遠慮のない会話を交わしていたが、新しい事件に呼び寄せられる。
ひとりの少女が家に帰ってこない。

ヘロン・カーヴィック『ミス・シートンは事件を描く』

一回読んでからまた二回目を読んだ。おもしろい。笑わせてくれる。
ミス・シートンが主役のシリーズ1冊目『村で噂のミス・シートン』は、美術教師のミス・シートンが遺産でもらった田舎の家に行く前にロンドンでぶつかった事件からはじまり、田舎に着くとまたまた事件。田舎の人たちがおもろく笑わせてくれた。思いつきで書いたようだけど、うまく考えて決着をつけた作品だった。ブラックユーモアもただよっている。

ミス・シートンは自分が実際に見たことを絵に描く。警察官たちは事件に遭遇したミス・シートンに犯人の顔を描いてもらい、捜査におおいに役立てた。今回は絵の代金の小切手を郵送してくれたので、ミス・シートンはそれを銀行へ預けに行って悪い出納係と出くわし連れ去られる。

今回もとぼけた味わいのミス・シートン、村のナイト医師と娘のアン、女性新聞記者のメルが大活躍するのも楽しかった。先日、映画『バガニーニ』を見たとき、ロンドンの女性記者が取材にきていて派手に元気にふるまってた。メルもようやっているがこれってイギリスの女性新聞記者の伝統的スタイルなのかな。

事件は一方で連続子供殺人事件、もう一方で銀行の出納係が横領し変装して別人になりすまし逃亡する事件が発生。ミス・シートンは学校の子供たちの似顔絵を依頼されるが、学校に行かず家にいる一人の少年の顔だけは描けないという。あの顔は子供ではない。

クライマックスの戦闘が楽しかった。メルの武器は長いひものついたトートバッグ。家を出るときバッグにドアストッパーを投げ込んで武器になるかゆらゆら試してみて、これはいけると駆け出した。ミス・シートンには傘がある。
(山本やよい訳 原書房 コージーブックス 880円+税)

ヘロン・カーヴィック『村で噂のミス・シートン』

先日翻訳者の山本やよいさんが本を送ってくださった。『村で噂のミス・シートン』って楽しそうなタイトルやなあ。著者はヘロン・カーヴィック、知らんなあ、はじめての名前だ。コージーブックスは以前かなり読んだが、最近はヴィク・ファン・クラブの会報に連載中の「コージー・コーナー」(書き手は影山みほさん)で紹介されるので、彼女の原稿だけで満足して本は読まずにすませていた。でも紹介文を読んでるから作者名はかなりおさえているのに、ヘロン・カーヴィックははじめて。紹介を読むとBBC制作のラジオドラマ『ホビット』でガンダルフを演じた俳優だって。どこかのんびりした感じはホビットと似通っているかも。

さっそく読みだすとすっごくおもしろい。
ロンドンの学校で美術の教師をしているミス・シートンは、亡母のいとこからケント州にあるコテージを相続した。明日から休暇3週間を過ごしに行く予定である。
その前日にオペラに行った帰り道で出会った男女の事件に巻き込まれる。なにげなく持っていた傘で女を刺した男をつついてしまったのだ。男は逃げていき女は殺されていた。
警官が二人やってきて話を聞く。その展開がおもしろくて本を離せなくなる。
場所はロンドン、警視庁の警視と部長刑事の警官コンビが楽しい。ロンドンからケント州に場所を移してまた捜査に関わるが、事件はもっと大掛かりになっていく。
ぱーっと読んだので消化不足だ。もう一回読もう。
(山本やよい訳 コージーブックス 840円+税)

寒い日は本読みにかぎる

最近は読書熱があがっていて昨夜も遅くまで本を読んでいた。寒い日は本読みにかぎる。
谷崎潤一郎『吉野葛』の古い岩波文庫はおおかた読んでいたので少し残っているところを読み終わった。読書中の村松剛『帝王 後醍醐』のあとがきで南朝のことは谷崎潤一郎『吉野葛』があるから書くのをやめたとあって、あわてて『吉野葛』を探したのだ。いい物語だった。
道はまだまだ遠い。『帝王 後醍醐』のほうはまだ5分の4くらい残っている。

山本やよいさんが新しく訳された本を送ってくださった。封筒から出したときは、著者ヘロン・カーヴィックって新しいコージー・ミステリかしらと思ったが、ちょっと開いて読んでみると、ユーモアの質が違うように感じた。作者についての説明を読むと、イギリスBBC制作のラジオドラマ『ホビット』でガンダルフを演じた俳優と出ていた。

それで慌てて最初から読みだして今日はかかりきりで読んで半分くらいいった。これからが楽しみだ。
(『村で噂のミス・シートン』ヘロン・カーヴィック 山本やよい訳 コージーブックス 840円+税)

エドワード・D・ホック 木村二郎訳『怪盗ニック全仕事6』

※すみません、最後にオチが書いてあります。
エドワード・D・ホックの作品はどれも登場人物が穏やかでとぼけていているところが好き。特におかしくて真面目な怪盗ニックのシリーズが好き。最初読んで楽しみ、二度目を読んでも同じところで楽しめる。たまにそんな自分のことをアホちゃうかと思うけど、楽しむ才能があるんやからしゃあない。子供のときといっしょで心が暖かくなる物語が好きなのである。『小公女』を何度も読んで幸せになったように、怪盗ニックといっしょに冒険して危険を脱して依頼者からお金を受け取るニックといっしょにほっとする。

ニックにはグロリアという良き相棒がいる。最初に読んだ時からいっしょに住んでいてガールフレンドと書かれていた。ニックのことを政府の秘密の仕事をしている人といわれて信じ込んでいた。泥棒とわかっても動じず。ときどき協力するもんね。

今回ははじめてニックとグロリアの馴れ初めの話をしてくれる。目次の二つ目にある「グロリアの赤いコートを盗め」。
ニックはグロリアの赤いコートを盗んで欲しいと依頼を受ける。グロリアは1965年の初冬にオハイオ州の短大を出てニューヨークの出版社で働いていたとき、買ったばかりで1回だけ着た赤いコートを盗まれる。
ニックがグロリアの部屋に忍び込んだときニューヨーク市中が停電し、ろうそくをつけた部屋で二人はサンドイッチとビールでおしゃべりする。

コート泥棒の依頼人とグロリアは知り合いだった。仕事場から一緒に歩いていたとき、グロリアはふいに突き飛ばされそうになる。見張っていたニックが引っ張って助ける。
その晩はグロリアの部屋でビールを飲み、ニックは引っ越してこないかと聞くがグロリアは断る。でもクリスマスには赤いコートを買ってくれ映画に連れて行ってくれた。その2日後にグロリアは引っ越した。

(木村二郎訳 創元推理文庫 1300円+税)

※ミステリーだけど、ストーリーを書いてしまった。

コルカノンを食べて北アイルランドのミステリー

今日の晩ご飯は焼酎のソーダ割りと前菜としてハムとコルカノンを盛った一皿。アイルランドのジャガイモ料理コルカノンが大好き。茹でたジャガイモと茹でたケールを合わせてつくる。
ついでに書いておくと、主菜は野菜とキノコと鶏肉の鍋。残ったスープに中華そばを入れて食べた。

このところ10日くらい暇があれば家中の椅子に座り込んで読んでるのが『コールド・コールド・グラウンド』。主人公ショーン・ダフィは王立アルスター警察隊巡査部長。口が達者で手が早い。一人暮らしで簡単な料理をさっとつくる。お酒はもちろんよく飲む。北アイルランドでカトリックであることが大変なことだとこの本でよくわかる。
北アイルランドのことは児童文学、たしか岩波少年文庫に入っていた女性作家の作品を読んで勉強になった。かなり前の話だけど、うっすらと頭に残っているからこの本を読むのに助けになった。
誰かとなんかしゃべっていて相槌が「あい」。この翻訳をうまいと思った。ふだん「あい」といっているけど書くときは「はい」になってしまうから。

事件は撃ち殺してから手首を切りとり、胴体の上にその手首を置いてある死体が発見されたことからはじまる。ところが胴体と手首は別々の人間のものだった。
(エイドリアン・マッキンティ 武藤陽生訳 ハヤカワ文庫 1000円+税)