ゾエ・カサヴェテス監督『ブロークン・イングリッシュ』

監督のゾエ・カサヴェテスはジョン・カサヴェテス監督と女優のジーナ・ローランズのあいだに生まれた娘である。主人公のノラ(パーカー・ポージー)はニューヨークのホテルでばりばり働いているが、内面は神経質な女性である。結婚願望があるけどうまく恋人ができない。彼女と親たちをとおしてニューヨークの中産階級の子女の恋愛と結婚事情が繊細に描かれている。たまたまフランス人のジュリアンと知り合いニューヨークの夜を遊び歩き、翌朝ノラのアパートで目覚める。
ジュリアンがフランスに帰り、ノラは彼を探しにパリへ行くが電話番号を書いた紙をなくして盲滅法に探すことになる。パリの夜を過ごすバーで出会った男性がさりげなくかっこいい。
結局、ノラとジュリアンは偶然出会って気持ち良い再会。

フランソワーズ・サガンの小説を読んでいるような映画で、ひとつひとつのシーンがサガンの小説の一節のよう。

『キャロル』の縁で

去年の2月に映画『キャロル』を見て、小説のほうも前後して読んだ。映画を何十回見たという人がたくさんいるの知った。そうこうしている間にツイッターでたくさんのキャロルファンとツイートのやりとりで知り合いフォロワーさんがけっこうできた。わたしとしては30年近く前にV・I・ウォーショースキー(ヴィク)のファンが集まったとき以来の出来事である。こういう感情を持つことはもうないと思っていたからうれしいようなまぶしいような。キャロラーたちの集まりはもうすでにあって、わたしの目にも触れていた。でもって弥次馬魂が炸裂し厚かましくもメッセージのやりとりをするようになった。

今日は気持ち良く飲み会とあとのカフェに誘ってもらったのでついて行った。
ヴィク・ファン・クラブで経験してたけど、好きの中心があると話が早い。にっこりするとわかりあえる。子か孫かと言われそうだが若い女性たちと笑いながらしゃべれて幸福だと思った。まあ、それなりに気を使いはしたが、彼女らのほうがもっと気を使ってくれて段差に気をつけてくれたりね(笑)。

アレックス・ガーランド監督『エクス・マキナ』

2015年のイギリス映画、脚本家アレックス・ガーランドの監督デビュー作、108分。ツイッターで評判は読んでいたけどここまでおもしろいとは。アマゾンプライムで見た。
『リリーのすべて』の妻役でアカデミー助演女優賞を獲得したアリシア・ピカンダーがアンドロイトを演じていて哀しいほどに美しい。アンドロイドや広大なお屋敷の近未来的デザインで88回アカデミー賞視覚効果賞を受賞した。

広い雪山の重なりの中にヘリコプターが降りていく。検索エンジンで有名な世界最大のインターネット会社でプログラマーとして働くケレイブは社内公募で選ばれ社長の別荘に1週間滞在することになる。ヘリが到着してケレイブを降ろすと操縦士はここから先は歩いてくれと道を教える。別荘に到着すると社長がいて仕事を与える。人工知能を搭載した女性アンドロイドのエヴァに感情があるかを判断せよというものだった。その他には社長の世話をするキョウコという若い女性がいるだけ。

東洋的な邸宅のデザインが細かいところまで行き届いていて、そこにアンドロイドがいる不思議な景色がすごい。
最後まで息もつかずという感じで見ていた。結末がすごくうまくて不安収まらずという感じ。

今日は彼岸の入りで聖パトリックデイ

今日は彼岸の入り。「暑さ寒さも彼岸まで」っていうけど昨日までとうって変わって暖かい日だった。夕方からは冷えてきてストーブの温度を上げたけど。
陽射しが明るかったので、ベランダにいろいろ出して干した。ドアを開けっ放してもそんなに寒くなくてうれしい。でも花粉がえらく舞っていたようで、部屋に入るとくしゃみの連続。洗濯物の取り入れに出てもまたくしゃみ。いまも空気の入れ替えに窓開けたらくしゃみと鼻水。

その上に今日は聖パトリックデイである。
アイルランドに思いを馳せてピーター・トレメインの修道女フィデルマのシリーズを1冊引っ張り出した。『翳深き谷 上下』(創元文庫)。今夜は修道女フィデルマの世界にひたろう。
映画も見たいなあ。『静かなる男』とか『ライアンの娘』を見たいけど時間がない。昔は両方ともレーザーディスクを持ってたけど・・・。
『ONCE ダブリンの街角で』をまた見たいし、『ザ・コミットメンツ』も久しぶりに見たいなあ。ケン・ローチの諸作品も。
そういえば『ブルックリン』をまだ見てなかった。
今夜はせめてU2を聞きながら本を読もう。

キャスリン・ビグロー監督『ゼロ・ダーク・サーティ』

『ゼロ・ダーク・サーティ』(2013)は、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件のオサマ・ビンラディンの暗殺にいたるまでを描いた映画。緊迫したシーンの連続で目を離せない。初めて見る女性監督の仕事を緊張して見ていた。

ビンラディンの行方を追って捕まえた捕虜を拷問しても情報を得ることができない。暴力はエスカレートしていくが捜査は進展しない。そこへCIAの情報専門家マヤ(ジェシカ・チャステイン)が赴任してきた。情報の収集と分析に優れたマヤは男性の同僚がやる拷問に冷静に対応しひるまない。同僚は拷問に疲れて帰国するがマヤは残る。
新たに加わった同僚の中に女性が一人いて、語り合ったりもする仲になるが、彼女は自爆テロの犠牲になる。その分もがんばるマヤはだんだん仕事熱心が嵩じて狂気じみてくる。それでも執念深い探索でビンラディンの隠れ家を特定するにいたる。

隠れ家を強襲するヘリが飛び立つ。ほとんど暗闇の中に突入し、ビンラディンを特定し殺害する。マヤはヘリが帰るのを待ち、最後まで冷静に対応する。
作戦実施前に高い地位の上司がマヤがランチを食べているところへやってきて質問する。マヤは高卒でCIAに就職してやった仕事はこれだけと答える。

テロで犠牲になる同僚役がジェニファー・イーリー。なんとまあ、コリン・ファースの『高慢と偏見』のヒロイン、エリザベスをやってたひとだ。『抱擁』の中の物語の詩人役もよかった。

ポール・グリーングラス監督『ジェイソン・ボーン』

ジェイソン・ボーンのシリーズを第1作『ボーン・アイデンティティー』(2002)第2作『ボーン・スプレマシー』(2004)第3作『ボーン・アルティメイタム』(2007)まで見ている(3作ともポール・グリーングラス監督でマット・デイモン主演)。第4作『ボーン・レガシー』 (2012年 トニー・ギルロイ監督でマット・デイモンは出ていない)は見ていない。
ということで、久しぶりのジェイソン・ボーンで興奮した。

第1作から15年も経っているから、アクションものといってもかなり違っている。派手などつきあいや銃撃戦も沢山あるけれど、原因やら説明やらはコンピュータの世界である。デイモンがこの映画は「スノーデン後の世界」のボーンになると明かしたと解説に出ていたが、そのとおりでコンピュータを制した者が次の支配者になる世界だ。そのうわてを行くのがジェイソン・ボーンで、女性のCIA局員が自分の支配下におこうと賢く(狡猾に)しようとするのをさらっとわかっていることを知らせるところがよかった。

アン・リー監督『ブロークバック・マウンテン』を再び

アカデミー作品賞に『ムーンライト』が選ばれたことで『ブロークバック・マウンテン』(2008)も『キャロル』とともに話題になった。
実は去年の1月どんな映画かも知らずに見て衝撃を受けた。激しい男性どうしの愛の映画だった。すごく強烈な愛のかたちにくらくらした。

ワイオミング州ブロークバック・マウンテンの山の中で羊の放牧を行う季節労働者として雇われた青年イニス(ヒース・レジャー)とジャック(ジェイク・ジレンホール)は寒さを避けて入ったテントの中で抱き合う。
これが20年にわたる途切れ途切れの愛の生活の発端だった。
二人ともいい相手と結婚し子供が生まれたものの、お互いを求める気持ちを断ち切れない。ジャックは牧場をやって男二人でいっしょに暮らそうと誘うが、イニスは子供のときにリンチにあって殺されたゲイの男性の死体を父親に見せられたことがあり、ジャックとの関係を隠し続けようとする。妻にジャックと抱き合っているところを見られ、釣り旅行に行くと騙して山に行ったのもばれて、ついには離婚されてしまう。一人暮らしになってもイニスの気持ちは変わらない。

ある日、ジャックに当てたハガキが「死亡」のスタンプを押されて戻ってきた。ジャックの妻に電話すると事故で死んだというが、イニスはジャックが男たちに襲われて殴り殺されたと推察する。
イニスはジャックの両親に会いに行きジャックの遺言に従って遺灰をブロークバック・マウンテンに撒きに行くというが、父親が家の墓に入れると断る。ジャックの部屋に入れてもらって彼のシャツと重ねられた自分のシャツを見て涙するイニス。

リチャード・リンクレイター監督『ビフォア・サンセット』を再び

ビフォアシリーズの2作目。前作『ビフォア・サンライズ』から9年経った設定で出演者も9年経って同じカップル、ジェシー(イーサン・ホーク)とセリーヌ(ジェリー・デルピー)である。
今回もすごくよかった。内容がわかっているだけに見方が深まった。ジェシーの「パリのアメリカ人」的なちょっと田舎者のようなところと、セリーヌのおしゃれなパリジェンヌ的なところがとてもよい。

ジェシーは9年前の出来事をテーマにした小説を書き、作家として認められて、いまパリの書店でサイン会が開かれている。一人の女性ファンが事実かと突っ込んで聞くのがおもしろい。話しながらセリーヌが来ていることに気がつく。セリーヌはこの書店の常連でジェシーがパリに来ているのを知り立ち寄ったのだ。
飛行機の時間がせまっているけど、少しだけと書店の人にいって二人はカフェに行く。歩きながらもお店でも話がつきない二人。店が手配してくれた車に迎えに来てもらい、しゃべりながら結局はセリーヌの住まいまで行く。
セリーヌの部屋のインテリアが素敵。ジェリーはセリーヌに歌をうたってと頼み、セリーヌはギターを抱えて歌う。
最後に部屋でかけるニーナ・シモンの歌が素敵。

『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』を再び

『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』を去年の8月に見て魅せられ、翌日9年後の『ビフォア・サンセット』を見てますます惹きつけられた。1995年と2004年に見ていたら自慢しまくってただろうけど、残念ながら2本とも2016年にアマゾンプライムで見せてもらってわいわいいってる。
3作目の『ビフォア・ミッドナイト』の物語はまた9年後になるのだが、これはDVDを買ってここにある。連続で見るつもり。

3作とも見てから1作目を見ると、最初は気がつかなかったことにいろいろと気がついて満足感に満たされた。
フランス人のジュリー・デルピーとアメリカ人のイーサン・ホークはヨーロッパを走る列車で偶然知り合い、その夜を共に街を歩きまわり公園で横になって過ごす。映画『第三の男』で知られたウィーンの大観覧車が動いているのが懐かしい。詩人、占い女などと声を交わし、クラブ、バーなどで遊び、最後はお金がなくなって入ったバーでワインを借りて公園へ。そこで一夜を過ごして朝の別れ。ほんとによかった。

C.サレンバーガー『機長、究極の決断「ハドソン川」の奇跡』

クリント・イーストウッド監督の映画『ハドソン川の奇跡』を見て感想(1月30日)を書いたら、yosさんが「原作が大好きです。3回ぐらい読んだ。映画も見て、すごくよかった。」とコメント(ミクシィ日記)をくれた。
わたしは原作があったことも知らずに見ていたので、あわてて本を買って2回読んだ。クリント・イーストウッド監督は映画化にあたって、原作全体でなく事故に焦点をあてている。事故シーンの合間に過去のことや私生活も少しはあるけれど、事故と全員生還にテーマをしぼっている。そして事故対応の必然が見るものを納得させる。

原作ではサリー・サレンバーガー機長の生まれてからいまにいたる生活や仕事のこと、とりわけ「飛ぶこと」への憧れと現実化について詳しく書いていて感銘を受けた。
子供時代に父親から受けた実地の教育は、ワシントン大統領の子供時代のようであるし、ロバート・B・パーカーが書いた私立探偵スペンサーが依頼人の少年と家を建てるシーンを思い出した。
私生活で夫妻にこどもができず、養子を2回もらうところはアメリカだなあと感心した。

映画では事故調査を中心にもってきて、あの判断でよかったのか的を絞ったスリリングな展開だった。本書を読むと軍隊体験も含む飛行経験を重ねていたからこその、事故対応だと納得できる。機長と副操縦士が冷静に判断したこともすごいことだった。客室乗務員3人の冷静な行動も素晴らしい。
yosさんこの本を教えてくれてありがとう。
(十亀 洋訳 静山社文庫 838円+税)