モーヴ・ビンキー『サークル・オブ・フレンズ 上下』

パット・オコナー監督の映画「サークル・オブ・フレンズ」を見てから原作(アイルランドの女性作家モーヴ・ビンキー)があるのを知って、アマゾンで中古本を注文。すぐに届いたのをすぐに読んでしまった。
すでに映画でストーリーは知っているけど、厚めの文庫本2冊にぎしっと入った物語がとてもおもしろかった。
今日もう1冊同じ扶桑社ロマンスから出ている本「イブニング・クラス 上下」を注文したのだけれど、よく出してくれていたと扶桑社に感謝。モーヴ・ビンキーさんは去年お亡くなりになっているのをいま知った。

50年代のアイルランド、ダブリンへバスで行ける距離にある田舎町ノックグレンの紳士服店の娘ペニー、お屋敷のお嬢様だった母と使用人の父の間に生まれてすぐに両親を亡くし修道院で育ったイヴ、このふたりの友情がしっかりと芯にある。小学校のときにいじめられるイヴをペニーは体を張って助けた。イヴは大柄で不器用なペニーのためにはなんでもしようと思っている。
大学に行くように両親が学費保険をかけていたペニーはダブリンの大学へバス通学をはじめる。イヴは学費を出してもらえるように母の実家の当主サイモンに掛け合い、生活費は修道院で知り合ったキットがやっているダブリンの下宿屋で働いてまかなうことにする。
楽しい学生生活ですぐに友だちのサークルができる。パーティや映画やカフェや学生たちは青春を謳歌している。田舎育ちのペニーとイヴは美人のナンと知り合って服装のことや男性とのつきあい方などを教わる。
サイモンは地主で上流階級、ペニーと仲良くなったジャックの父親は医者で中産階級、ナンの親は建設業者で下層階級とはっきりとしている。ナンは美しく生まれ、母は娘に期待をかけ向上心を持つように育てた。酒飲みの野卑な父親からお金だけは出させ、外側は洗練された女性としてなに不自由なさげなナンである。態度もしっかりとしていて大人が振り回される。

映画にはならなかった部分がたくさんあって読み応えがあった。田舎町の人々のウワサがなんでもすぐに伝わってしまうところや、だからこそのこれは隠し通すということの重み。
ジャックに捨てられて泣くんじゃやなくて、しっかりとした態度をとることでウワサは今日一日で終るというやりかたをイヴがペニーに教える。
(中俣真知子訳 扶桑社ロマンス 1996年発行)