パク・チャヌク製作・監督・脚本『お嬢さん』

原作サラ・ウォーターズの『荊の城 上下』(創元推理文庫)は何度も読んだお気に入りの小説。ディケンズを思い起こさせるロンドン貧民の暮らしがこれでもかと描かれ、主人公の少女スッキの強さと柔らかさに魅せられる。それが詐欺師の一味としてお城にやってきて、お嬢さま(キム・ミニ)にからむ。お城にいたお嬢さまは実はなかなかのやり手なのであった。
素晴らしい映像。イギリスのお城の代わりに日本建築のお屋敷だが、広い庭園の中をくるまが走る。門を過ぎたところで降りる支度をするスッキ(キム・テリ)に運転手がまだまだだから起きなくてもよいと声をかける。『レベッカ』の邸宅に到着するまでのうねうねした道を思い出した。

まだ韓国が日本統治下にあった時代のお話で、セリフはほとんど日本語である。
そのお屋敷で生まれ育った秀子お嬢さんと召使いに雇われた娘スッキの間にかもされる不思議な愛の交歓が妖しく美しく圧倒された。2016年の作品。
パク・チャヌク監督の映画は初めて見たんだけど、しかも原作のサラ・ウォルターズからの縁なんだけど、もっと見たいと思ったら、明日届く『イノセント・ガーデン』もパク・チャヌク監督で、不思議な縁に喜んでいる。よかったです〜