四方田犬彦・鷲谷 花 編集『戦う女たち 日本映画の女性アクション』(2009 作品社)を開いてまず読んだのは「緋牡丹お竜論」(斎藤綾子)だ。取り上げられている他の作品を全然と言っていいくらい見ていないから、なじみのあるお竜さんからまず入ろうと思った。
「緋牡丹博徒シリーズ」は全部で8作あって第1作が『緋牡丹博徒』である。わたしは1968年頃はずいぶん映画を見ていて、洋画は梅田で北野シネマやコマ劇場地下、日本映画は新世界の映画館だった。鶴田浩二、高倉健、池部良、ちょっと後には菅原文太とたくさんのヤクザ映画を見たものだ。このシリーズでは待田京介が好きだった。
「肥後熊本は五木の生まれ、姓は矢野、名は竜子、通り名を緋牡丹のお竜と発します」と仁義をきるお竜さんは美しくて清々しい。親分だった父親が辻斬りに殺されて、堅気の人と結婚寸前だったのに破談となる。多くの子分たちはいなくなり、終生ついていくという一人の子分に留守番させてお竜は渡世の旅に出る。
旅の途中で出会った高倉健に肩を怪我したお竜さんは片肌脱いで傷に薬を塗ってもらう。肩から背中に緋牡丹の刺青が花咲いている。
悪い奴がはっきりしており、女親分清川虹子の筋を通す古風な生き方が泣かせるし、お竜さんに惚れ込んでお竜さんのために死ぬ子分、若山富三郎(熊虎親分)のユーモア、不死身の待田京介の純情。様式美と笑い、すべてが揃ったやくざ映画だ。続けて8作みんな見るつもり。