館山緑『誓約のマリアージュ 甘やかな束縛』

ヴィク・ファン・クラブの世話人をしていることと、積極的にSNSをやってきたせいで、ほんの少数ながら作家や翻訳家の方々とネット上でつきあいがある。館山緑さんもそのひとりで、いつマイミクになったか覚えてないが古いつきあいだ。ゲーム関連の仕事をされていると思っていたら、ティアラ文庫から本を出された。「しあわせな恋のはなし」「子爵探偵 甘い口づけは謎解きのあとで」の2冊を買ってジュンク堂のどこにこの手の本が置いてあるかもわかった。最初は探しまわって店員さんに連れて行ってもらった(笑)。今回はさっさと買った。昔、フジミシリーズがあったところ(いまもある)。フジミを読むために「小説ジュネ」を買っていた時期もあった。館山さんの本を読むまで忘れてたけど。

「誓約のマリアージュ 甘やかな束縛」はこういう作品の決まりを守りつつ、作家の力量を見せていると思った。
主人公は美しい令嬢グレーテル(マルグレード・ドレスラー)。建築家の祖父が理想の館〈エーヴィヒトラウム〉を建てるために財産を使い果たし未完成のまま死去。両親はその思いを継いで奔走したが完成間近に相次いで亡くなった。グレーテルに遺されたのは莫大な借金とこの館だけである。
グレーテルは万策つきてこの館のためにいままで援助してくれた人たちに「この館を買いませんか?」と手紙を書くが、ほとんど「妖精の国を買いませんか?」と言っているようなものである。そこへ現れたのがフェリクス。
フェリクスは幼いときにこの館へ来てグレーテルに失礼なことを言い、池に突き落とされたことがある。それ以来の訪問の目的は、この館を買いグレーテルと結婚すること。
館山さんは名字にも使われているくらいに「館」が好きなんだろうな。ドレスラー一家が館に入れこんできたことを詳しくうれしそうに語っている。
お約束のベッドシーンが3カ所あって楽しませてくれるし、かくれんぼできる館でしばし遊べる。
(ジュリエット文庫 590円+税)