エドワード・D・ホック『怪盗ニック全仕事 3』

今日は雨でここ数日の猛暑がちょっと緩んだ。窓から入る風が心地よい。お気に入りの椅子に座って、お気に入り怪盗ニックの物語をゆったりと読んでいる。ニックとグロリアのようにヨットで海に浮かんでいたらどんなによろしかろうと思いながら。でもうちらにはニックほどの頭と度胸がないからしかたない。せめてコーヒーでも淹れようか。夜が更けたら週末だしウィスキーという手もあるわね。

ニック・ヴェルヴェットはガールフレンドのグロリアとニューヨークで暮らしている。仕事は一件につき2万ドルで値打ちのないものを盗む泥棒である(本書の途中でグロリアの意見で2万5千ドルに値上げする)。お金や宝石や世間で値打ちがあると決まっているものには頼まれても手を出さないのを原則としている。

※この物語はずいぶん前に読んだので書いてもいいと思いました。「きのうの新聞を盗め」をまだ読んでない人はネタバレなのでここから後の一段落は飛ばして読んで、作品を読んでからもう一度ここへお越しください。

ニックは泥棒であることを長期間グロリアに隠していた。ニックのみかけはごく普通だし態度も静かだから、泥棒で稼いでいるなんて全然見えない。グロリアは同居が10年超えても、政府の仕事をしてるみたいだけど、それにしてはおかしいところがあるわねって感じだ。
今回は泥棒であることがグロリアの前で他人の口から明かされてしまい、グロリアは反発する。いよいよ打ち明けるべきときがきたとニックは家で酒を飲みながら打ち明ける。ドキドキして返事を待つニックに軽くグロリアは答える。ほほえんで「最低二万五千ドルは要求すべきだと思うわ」
ほんまに素敵なカップルである。大好き。

『怪盗ニック全仕事 3』には第30話「つたない子供の絵を盗め」からはじまって、第44話「使用済みのディーバックを盗め」まで14の物語が収録されている。
(木村二郎訳 創元推理文庫 1300円+税)

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