エイヴリー・エイムズ『名探偵のキッシュをひとつ』

昨日は考えが飛躍しておかしなところへ着地した。あれはわたしの妄想だがすごくうまく言い表していると思う。現実にはミクシィの「強い女」のコミュニティに翻訳ミステリの登場人物は女性探偵だろうとコージーの主人公であろうと出てこない。どちらにしても少数派なのである。運動をしている女性だって女性全般からすれば少数派である。
でも、彼女たちが世の中を変えていくのには間違いない。わたしらがジーパンと運動靴で開いた道を踏み越えて。

さて、本の感想。
主人公シャーロットはオハイオの小さな町プロビディンスで祖父から継いだチーズ店を従兄弟のマシューと共同経営している。祖父と祖母は第二次大戦後にフランスから移住して苦労の末にお店を開いた。シャーロットの両親は小さいころに自動車事故で亡くなっている。
この町は近所にアーミッシュのコミュニティがあって観光客が多く、しゃれたお店が次々と開店している。祖母は町長でありプロビディンス劇場の経営者でもある。
従兄弟のマシューは妻が勝手にイギリスに帰ってしまったので、双子の小学生姉妹を連れてチーズ店で働きだした。店員のレベッカはアーミッシュ出身の若い娘できびきびと働いている。バイトのボズは16歳のコンピュータの達人。店の経営が順調なので、これから別館をつくって販路を広げようと改装中。

近くのチーズ製造業者のジョーダンにシャーロットは惹かれている。まるでエロール・フリンのようないい男(なんでいまの時代にエロール・フリンなんかわからん)。
新装開店のパーティにたくさんのお客が来る。クリスティーンは次期町長に立候補しようと虎視眈々。夫のエドは女好きでいやなやつである。
チーズとワインが次々に出されてパーティは盛り上がっている。シャーロットは記者から質問を受けてこれからやりたいことを話して上機嫌。と、そこへ外の歩道からつんざくような悲鳴が聞こえた。エドが倒れており祖母が壁際にうずくまっている。放心状態で手が血に染まっていた。

祖母は逮捕されるが在宅拘禁ということで帰ってきた。町長選挙の日が迫っている。シャーロットは犯人捜しを始める。レベッカが助手をつとめる。直感で考えて警察署長を悩ましながらまっしぐら。

登場人物が多くて、普通に読むだけならすっとばしてすすむが、読書会となるとそうもいかない。面倒だが〈主要登場人物〉にもどっては、この人はなに屋さんかと確かめた。
犯人を突き止めるまでにあっちこっちと鼻をつっこむシャーロット。おばあちゃんは拘禁生活にいらいらして庭で道に向かって演説したり芝居の稽古をしたり。
(赤尾秀子訳 原書房コージーブックス 895円+税)