タイトルと表紙のイラストを見ただけでドーナツを食べたくなる。訳者の山本やよいさんに送っていただいたのをすぐに読みはじめて翌日読んでしまった。ドーナツを食べたくなる本やでと友だちにいったらすぐに二人が注文した。ドーナツでなくてこの本をね。
アメリカ、ノースカロライナ州にある人口5001人の町エイプリル・スプリングスで、スザンヌ・ハートはドーナツの店〈ドーナツ・ハート〉を経営している。俳優のマックスと結婚していたが、夫の浮気がわかって離婚し、離婚手当で店の権利を手に入れた。
毎日午前2時には店にきてドーナツ作りをはじめ、正午には後片付けをすませて店を閉める。おかげで夜の8時以降のデートの可能性はゼロ。でもマックスと別れて以来男性に興味がもてないでいる。アシスタントのエマは2時半頃にやってくるが、今日はお休みの日でスザンヌは一人で働く日である。
外で車の音がしたので照明をつけると、スキーマスクをした男が店の前に人の身体を投げ出して車で走り去った。よく見ると知り合いの銀行員パトリックですでに死んでいた。
警官たちが帰った後、ドーナツ作りをはじめる。パンプキンドーナツを作り終えてプレーンなケーキドーナツ(プレーン、ブルーベリー、チェリー)を作り始める。この手順を読んでいるとだんだんドーナツが食べたくなってくる。
常連のジョージが来ていつもの通りの注文をしてから、噂を聞いたが何があったかほんとのことを話してくれという。ジョージは10年以上前に警察を辞めた元警官である。
州警察捜査官のジェイク、警察署長と警官たちが捜査をはじめているが、ジョージや親友のグレース、近所で衣料店をやっているギャビーが協力してくれてスザンヌは自分なりに調べ始める。
そして、ジェイクと食事に行く仲になる。いっしょに行ったイタリアン・レストランの料理が、これまたおいしそうでコージーミステリの醍醐味をたっぷり味わえる。お約束のレシピ〈ドーナツの作り方〉が巻末にいっぱいあります。
近くにおいしいドーナツ屋さんがなくて、わたしはまだドーナツを食べてない。
(山本やよい訳 原書房コージーブックス 838円+税)