まだまだ読んでいるレジナルド・ヒルのダルジール警視シリーズ。昨日は短編集「ダルジール警視と四つの謎」を読んだ。初期のころの四つの短編なのだが、ダルジールとパスコーとウィールドがはじめて出会う「最後の徴集兵」が楽しい。ずっと彼らの活躍を読んできた者にとっては、こうして3人は出会い働いてきたのかと感慨無量的な気分になる。
ダルジールとパスコーが陥る危ない場面のときに、パスコーがハリウッド映画の名台詞できめるのがおもしろい。優等生ぽいパスコーにいたずらっ子のような三枚目的なところがあるからこのシリーズはおもしろいのだ。
【「遅れる、遅れる、とっても大事なデートに遅れる」(「がんばれ、巡査」から)パスコー刑事は歌った。窮地に立たされると、彼はお手本となる対処法をいまだに映画に求めてしまうのだ。】
作品の最初が↑で、それからページを繰ると、「お熱いのがお好き」「キー・ラーゴ」「戦場にかける橋」「栄光の調べ」「静かなる男」「ワイルド・パンチ」「誰が為に鐘は鳴る」「シェーン」「巌窟王」「バグダットの盗賊」と映画の主人公の台詞や動きを思い出して、いまの自分のやるべきことの規範を求めようとする。
レジナルド・ヒルさん、楽しんで書いてはります。
後期の作品「ダルジールの死」では、パスコー主任警部はずっと上の組織CAT(合同テロ防止組織)本部に呼ばれてマンチェスターで働くが、自分からヨークシャーに帰ることに決める。そのときのパスコーの「カンザスに帰ります」(原注「オズの魔法使い」より)と決めた台詞に爆笑。
(秋津知子他訳 ハヤカワ文庫 820円+税)