十三で乗り換え

毎年金木犀が咲くころになると思い出す恥ずかしかった出来事。いままでどこにも書いてなかったので初披露です。

ハタチそこそこのころ、和文タイプを習いに行って知り合ったNさんに誘われて帰り道に彼女の家に行った。阪急宝塚線の曽根の駅のそばの大きな田舎風の家で庭に金木犀が咲いていた。物をくれるのが好きな子で「これあげる」とよくちょこっとしたプレゼントをくれる。その日は金木犀をたくさん切ってくれた。
それを抱えて宝塚線で十三(じゅうそう)までもどり、我が家のある神戸線に乗り換えようとしたら電車が入ってきた。走って最後の乗降口へ乗ったつもりが、電車とホームの間に落ちた!
ちょうど学生さんがたくさんホームにいて引っ張り上げてくれたのだが、電車が待っててくれて、車掌さんが怪我がなかったかと聞き「大丈夫です」と答えたら発車した。電車に乗ってる人がみんな見ていてカッコ悪かった。
家に帰っても家族には内緒にしてた。かなり経ってから笑い話にしたけど、ぼけっとしているからだと怒られた。
自分ではホームの下に落っこちたのは金木犀の香りに酔ってたからだということにしている。十三で電車に乗るときはいつも落ちないように気を付けてる。

Nさんは自分の彼氏を紹介してくれて3人で天王寺公園へ行ったことがある。彼は文学青年で同人誌に誘ってもらったのがわたしが人に見せる文章を書いた最初だった。にもかかわらず、登山とデモのほうに走ってしまった。彼はNさんとはすぐに別れてしまったがわたしとは長いこと友だちだった。