レジナルド・ヒル「闇の淵」(1)

ダルジール警視シリーズはほとんど読んだと思っていたのに、先日ジュンク堂でポケミスを見ていたら未読本が見つかった。1991年初版発行で2005年に3判発行。「子供の悪戯」の次の作品である。そのあたりの本はほとんど図書館で借りて読んだ。とにかく読み出したのが遅くて10年くらい前に集中的に借りて読んだ。最近の新刊と図書館で読み残しているのは買っているが、まだあったとは。

パスコー警部の妻エリーは炭坑労働者のコリンと大学の社会人講座で知り合う。コリンは魅力のある若者でちょっとしたしぐさもカッコいい。エリーとコリンは講座が終わった後に講師と生徒という立場でちょっと話し合ったりするうちに微妙に惹かれ合う。
コリンの父親ビリーは3年前に炭坑町で少女が誘拐され行方不明になる事件の容疑をかけられるが、連続少女誘拐事件犯人の犯行とされ無罪となった。彼は3カ月後に愛犬とともに廃坑で転落死するが、町の人たちは自殺だとうわさする。コリンは父親の潔白を信じていて、疑惑を晴らしたいと思っている。

パスコーはウィールド部長刑事を食事に誘う。ウィールドはワインと薔薇の花束を持ってくるが、エリーにワインをパスコーに花を手渡す。「わたしが性差別をしていると思うなら、花とワインを交換してもいいですよ」と言ったウィールドはゲイなのだ。楽しい会話を続けるが、バイクに乗っているウィールドは「パトカーの連中たちは、バイクに乗っているやつはみんな暴走族で・・・」そこでパスコーとやりとりがあったあと、「一度バイクに乗ってごらんなさい。警官であることをやめてごらんなさい」それから声を落として「ゲイになってごらんなさい」という。パスコーは反射的に「せっかくだけどやめておくよ」と言ってしまう。
そこへコリンからエリーに電話がかかり、エリーはあわてて飛び出して行く。酔ったコリンを車に乗せたエリーは・・・
(嵯峨静江訳 ハヤカワポケットミステリ 1600円+税)