『週刊現代』4月8日号、佐藤優さんの連載「ビジネスパーソンの教養講座 名著再び」に網野善彦『異形の王権』が紹介されていた。〈後醍醐天皇の力の源「異形の輩」とはーー日本の暗部を突く論考〉とある。ちょっとあおられた感じで、読んでみたいと思った。網野善彦さんの本をいままで読んだことがないし、どういう傾向の人だとかも知らなかった。そもそも日本歴史を知らない。時代小説もほとんど読んでない。翻訳ミステリをただひたすら読んできただけというお粗末な人である。思い切って買ってみた。
読み出したら図版が多くて文章がわかりやすい。ただ、いくらやさしく書いてあっても基本がないからどうしようもない。絵と写真を見てふーんといっているだけだ。
わかったようなわからんような感じで最後まで読んだ。そこで見つけたのが、鶴見俊輔による解説「身ぶりの記憶」だった。鶴見さんによると、敗戦までの70年くらいに小学校に入った世代の日本人にあてはまることがある。日本史には三つの劇的な場面があって、その一つは天孫降臨、もうひとつは、南北朝対立のさいの南朝方の苦難。もうひとつは江戸時代の末に幕府をたおして新政府をつくる明治維新の偉業である。三つの劇的場面の中心に天照大御神、後醍醐天皇、明治天皇がいた。網野善彦の日本史はこれを切り崩すものとして対している。しかし後醍醐天皇を重要視するということにおいては、一致している。その位置づけかた、えがきかた、意味のとらえかたが違う。後醍醐天皇は、異形の人びとをよびあつめて新しい力をよびさました異色の天皇であり・・・
ここまで読んでようやく鶴見さんのいわんとすることがわかり、網野さんが書こうとしたことが見えてきた。こうやって文字を打つという行為も学びのひとつだなあ。自己満足(笑)。
(平凡社 951円+税)