雨の音を聞きながら「山の音」を読んでいた

「雨の日の猫は眠い」という言葉を猫を飼っているときになにかで読んでほんまやなと思った。外は雨、猫だけではなく人間も眠い。
片付けをすませテーブルに未読本を数冊置いてなにを読もうかと迷っていたら、あくびがはじまりハナミズずるずる。これはあかんとコーヒーをいれてナッツの缶を開けた。これで眠気をごまかして本を読もう。未読本はあかん、何十回目になる川端康成「山の音」にしよう。とても好きな小説で、最初に発表された雑誌から読んでいたような気がする。

鎌倉に住む会社経営者の信吾の長男の優しい嫁菊子への繊細な心遣いがこころに染みる。戦争のせいで気持ちが荒んだ修一は新婚の妻をないがしろにして外で女遊びにふけっている。
老夫婦と息子夫婦が暮らす家に娘がこどもをふたり連れて戻ってくる。息子は美男なのに娘は美人でなくひがみっぽい。修一と菊子は美男美女で、保子と房子は美しくない母娘である。菊子はいやがらずこどもの世話をする。

物忘れをするしネクタイの結び方を一瞬忘れたりで老年に入って行く自分を眺める信吾の気持ちをなんとなく読んでいたけど、いまでは共感して読んでいる(笑)。
妻の保子はまるい性格のいいひとなのだが、図太い神経の持ち主のように描かれている。信吾が保子の美しい姉に惹かれていたからだ。

微妙なこころの動きと生々しい夫婦生活の描写があって、その遠景には山の音が聞こえる鎌倉の自然がある。