キンドルには〈無料本〉というのがたくさんあってありがたい。青空文庫を縦書きにして読みやすくしているのが多いみたいだ。すでに青空文庫で岡本綺堂の「半七捕物帳」や横光利一、宮本百合子などけっこう読んでいるが、まだまだの本がいっぱい。当分電子書籍の新刊を買わないでいけそう。菊池寛訳の「小公女」があったので古い岩波少年文庫版を捨てた。何度も読んでいるからほとんど覚えていて、菊池訳に入ってないところを思い出した。ミンチン女史がインドの紳士を訪ねてきて、セーラが生意気な子だというところ。セーラが言い返すところが好きやねんけどな。まあ、読むときに思い出せばいいか。
小学校のときから親しんでいる夏目漱石だけど、3回くらいしか読んでなかった「行人」を今回読んで夢中になった。読むと思い出すのだが、その先がどうなるか覚えていないのでどんどん読み進む。そんなミーハー的興味まで満足させてくれた。
二郎が梅田ステーションで降りると母の遠縁の岡田が天下茶屋から迎えに来ている。そうそうお兼さんという奥さんだったと思い出した。二郎の両親の世話でいっしょになった岡田夫妻は円満に暮らしている。二郎は友人の三沢に会うつもりなので、この家を連絡先にしてあった。三沢は入院していた。
それから病院へ行って三沢と会い、彼が泊まっていた宿に滞在することにする。三沢は入院している女性「あの女」に惚れている。女と病気の話が延々と続く。
退院した三沢を送った翌日は母と兄夫婦を迎えにまた梅田ステーションへ行った。母のお気に入りのお手伝いさんの縁談をまとめようという岡田の計画である。縁談はうまくまとまった。
そこから話がややこしくなる。兄の一郎夫妻の不和が母にも二郎にも影を落とす。そうだ、昔読んだときは、嫂と二郎が一郎の要請で和歌山に行った章を読むのにどきどきしたっけ。
一郎は二郎に「直は御前に惚れてるんじゃないか」と言い、自分の妻を連れて和歌山に行き、妻に真意を聞いてほしいと頼む。二郎はいくら断っても引かない兄に悩み、母にも言われて中止しようとするが、兄は引かない。結局ふたりは和歌山に出発する。