スーザン・ヒル『ガラスの天使』

スーザン・ヒルとなにか結ばれているものを感じる。久しぶりに行った図書館の棚で目についたのが「ガラスの天使」と「雪のかなたに」の2冊のクリスマス物語だった。パロル社の美しい挿絵の入った小型の本だ。

「ガラスの天使」をまず手にとった。
ティリーは母と二人で屋根裏部屋で暮らしている。父は戦争で死んでしまった。
母はお屋敷のお嬢様のドレスを縫う仕事をもらった。お嬢さまは結婚式のドレスや付き添いの人たちのドレス、新婚旅行用の物も母に依頼してくれた。母が仮縫いに行くのにティリーはついて行き、母の仕事が終わるまでじっと待っていた。暖かい部屋で待っているのは苦にならない。
帰り道は土砂降りになった。重い荷物を持った母と歩いて屋根裏部屋へ。
翌日も雨、学校はクリスマス劇の練習で楽しい。家に帰ると母はお嬢様のドレスの生地を部屋いっぱい広げていて、ティリーは台所の隅でおやつを食べる。
階下のマクブライドさんはティリーに自分の過去のことやいろいろなことを話してくれる大人の友だちだ。
お母さんは学校のバザーに出すために人形を作ってくれた。ヴィクトリア・アメリアと名付けたこの子はくじ引きでルイーザのものになった。

母はひどい風邪を引き寝込んでしまう。ひどい雨漏りで縫いかけのドレスがびっしょり。ティリーは駆けてお屋敷へ。
けなげな母と子への周りの人たちからのさりげない贈り物に彩られたクリスマス。
(野の水生訳 パロル社 2004年発行 1400円+税)