ウディ・アレン監督・脚本『マッチポイント』

すごくおもしろい映画だった。ウディ・アレン監督の才気があふれているが、これみよがしのところがない。ほんとによかった〜
2005年のイギリス映画。大邸宅やテニスコートやロンドンの街やレストランや、そしてテームズ川と美しい風景がたくさん出てくる。美しいオペラの名曲(ドニゼッティ作曲のオペラ『愛の妙薬』から「人知れぬ涙」。歌っているのはカルーソー)が映画のはじめと終わりに流れ、金持ち一家はしょっちゅう劇場や美術館へ行く。ワインの好みもよろしいのでしょうね。

アイルランド出身のクリス(ジョナサン・リース・マイヤーズ)はプロテニスでいい線までいったが引退してテニスクラブにコーチとして就職。そりゃもう優雅なコートでお金持ちの子弟が楽しくプレーするのをそつなく教える。大企業の御曹司トムと親しくなり、その妹クロエ(エミリー・モーティマー)と付き合うようになった。読書家でオペラが好きなクリスは兄妹の家によばれて父親に気に入られる。ところが兄妹の家で出会ったトムの恋人で女優志望のノラ(スカーレット・ヨハンソン)に一目惚れしてしまい、クロエと結婚しても忘れられない。ノラはトムと別れてアメリカへ戻ったがまたイギリスに来て仕事を探している。クリスは子どもが欲しいができないので不妊治療をはじめる。クリスの目をごまかしてノラと会う日々、ノラのほうが妊娠する。ノラはクリスの離婚を待ったが埒があかないので攻め立てる。

クリスは計画を練り強盗殺人に見せかけてノラの隣人を殺しノラを殺す。ノラの日記によってクリスは疑われるが、運良く容疑が晴れる。テニスの試合にひっかけた証拠場面がうまい。
刑事がひとりクリスを疑うのが、イギリスの警察に敬意を表しているようでおもしろかった。

クリント・イーストウッド製作・監督・主演『マディソン郡の橋』

散骨部分を見たくてレンタルDVDで見た。1995年製作だから21年前の映画だ。1995年の1月に阪神大震災があった。当時は映画も原作小説もずいぶんと評判になって知り合いはたいてい見に行ってた。わたしは評判が静まったころに小説は図書館で借りて読み映画はレンタルビデオで見た。それからテレビ放映で一度見たっけ。
わたしはずっとクリント・イーストウッドの大ファンで、たいていの映画は映画館で見てきたが、震災の頃から映画館には足が遠のいていまにいたる。

最近クリント・イーストウッドが共和党のトランプ氏を推しているのをメリル・ストリープがたしなめたとかネットニュースで読んだが、『マディソン郡の橋』からの付き合いやったのね。
アイオワ州マディソン郡ウィンターセットに造られた特設セット『フランチェスカの家』で42日間にわたっての撮影だったそうだから、ずいぶんと親しくなったでしょう。

フランチェスカは農場の主婦といっても元々はイタリア人で、第二次大戦のときに進駐してきた米兵と結婚して、アイオアにきた女性である。夜の散歩でイェイツの詩を口づさむとロバートがあとを継ぎ、アイルランド人だからと言ったけどインテリどうし。
ありえない恋がアメリカの片田舎で花開く。古い屋根付橋(やねつきばし)の写真を撮りに来たカメラマンと道順を教えた農場の主婦の恋。夫と子どもが子牛の品評会に出かけた4日間という日にちが、燃え上がった恋を消す時間としてよかったのね。

夫が運転する車に乗って買い物から帰るフランチェスカと家路につくロバートの車が交差点で前後になる。夫はわかっているけど何も言わない。妻は涙を拭いてじっとしている。濡れながらクリント・イーストウッドが立っている。

トッド・ヘインズ監督『キャロル』をU-NEXTで

ヴィク・ファン・クラブの会報製作時期になって原稿がいっぱい集まっている。いろいろとやることがあるのに仕事が一段落した相方が映画を見ようと言い出した。恋愛ものなら見るわと答えたら、あちこちネットを調べて、おいおいU-NEXTで700円ほどかかるけど『キャロル』が見られるぜ、おれはいますぐに見たいなあとのこと。わたしがキャロル、キャロルとうるさいので、まず小説のほうを読んで感心し、映画を早く見たいなあと言っていた。ええっ、ほんま?ほな見ようやとわたし。
『キャロル』のBlu-rayを注文してあるのが26日に届くが、それよりも早く見られるのなら見たい。こういうときは話が早い。さっそくiMacの前に並んで座った。

ツイッターでみなさんの何十回見たというツイートを読むと、映画館で一度見ただけだからなんだかしぼむ。あのシーンと書いてあっても記憶が不確かだ。
いま見終わって「やっぱりよかったなあ、Blu-rayが届いたら何度でも見よう」「おれは小説よりずっと映画がよかったわ」なんて老夫婦の会話(笑)。

50年代の同性愛が罪であった時代に書かれたパトリシア・ハイスミスの小説をトッド・ヘインズ監督が去年映画化した。「愛」をテーマに一歩も引かずに描ききっているのを今日は強く感じた。法律も家族も自由な女性が愛に生きようとするのをしばれない。
キャロル(ケイト・ブランシェット)とテレーズ(ルーニー・マーラ)は、愛に生きようと決意した。お互いの顔を見合う最後のシーンにじーんとなった。

リチャード・リンクレイター監督+イーサン・ホークとジュリー・デルピー『ビフォア・ミッドナイト』

ようやく3部作を見終わった。偶然の出会いから18年経って、いまふたりは双子の女の子の親である。一家(ジェシー、セリーヌ、前妻の息子、双子の娘)はギリシャの作家に招かれて2週間のバカンスを過ごす。ジェシー(イーサン・ホーク)は1日早くアメリカに帰る息子をを空港で見送る。一生懸命会話する父親とクールな風を装う息子。いまの時期に息子と離れたくないからシカゴで暮らしたいジェシー。
車にもどるとセリーヌが待っていて娘たちは眠っている。前作同様に二人の会話が続く。セリーヌは仕事を含めいろんなことに不満を持っているし、ジェシーはアメリカに戻って子どものそばに住みたい。

招待先の家に戻ると、ジェシーは作家たちと庭のテーブルで懇談、セリーヌは料理の手伝いに台所へ。
休暇最後の晩ご飯はご馳走とワインで会話がはずむ。カップルたちののろけが入った会話が楽しい。ジェシーもセリーヌもみんなにウケる話をする。
その晩は子どもを預かってくれて、2人で過ごすようにホテルをとってくれて、豪華ホテルにふたりは到着する。ホテル受付でも本にサインを頼まれるジェシー。

ホテルで円満に終わるかと思ったら、愛のシーンになるはずのところで、どんでん返しだからたまらない。言いたいことをみんな言うというより叫びあうけど、セリーヌの怒りは収まらなくて外へ出かけてしまう。
海辺のテーブルの席についたセリーヌの前にジェシーが現れて手紙を読む。

『ビフォア・ミッドナイト』は明日とどく

おととい『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』を見て、昨日は『ビフォア・サンセット』を見た。アマゾンプライム会員が無料で見られるのはこの2本である。2日にわたって書いた通りすごくおもしろい映画で、このあとどうなったか知りたくてしょうがない。DVDが出ているのがわかったので、これは買うことにした。明日の午後に届くように注文したので今夜は一休み。ネットでいろんな人たちの紹介文や感想を読んでいると、ますます見たくなってきた。

最初の作品は1995年で、次は9年後の2004年、それからまた9年後の2013年に『ビフォア・ミッドナイト』がつくられて、わたしは明日見ることができる。もしまた9年後に4作目ができれて、運良く生きていられたら、わたしはようやくリアルタイムで見ることができる。

昨日、そのことをツイッターに書いたら「深夜1時くらいから観ることをオススメします。」との返信があった。わたしは土曜日は朝から姉の家に行くので、金曜日の夜はあんまり夜更かしできない。「多分あさっては深夜1時頃に見終わるかと思いますが、2度目に見るときはそうしますね。」と返信した。喜んでいるときにもう一度喜ばせてくれるなんてうれしいね。

リチャード・リンクレイター監督+イーサン・ホークとジュリー・デルピー『ビフォア・サンセット』

昨夜見た『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』の9年後、実際の時間も9年後である。昨夜サンライズを見て、9年はしょってサンセットを今夜見るなんて製作した人たちに申し訳ないけど、なにも知らなかったんで許してほしい。

アメリカ人の青年ジェシー(イーサン・ホーク)は、ウィーン駅で別れたときの約束どおり半年後にお金を工面してウィーンに行った。セリーヌ(ジュリー・デルピー)は祖母の葬式の日に重なり行けなかった。お互いに連絡方法がなかった。

失意のジェシーはその後結婚しきちんとした妻と息子がひとりいて、いま作家として新刊書の宣伝にヨーロッパをまわってパリにきている。新刊書は9年前のウィーンでのセリーヌと交わした愛の物語で、女性ファンから実話かと聞かれたりしているところへ店にそっとセリーヌが入ってきた。
ジェシーはファンとの交流が終わるとすぐに帰国することになっており、飛行機の時間までふたりはお茶でもと街へ出る。

仕事のこと、日常のことなど話しながら美しいパリの街を歩き、カフェでお茶してセーヌ川を往くボートに乗って会話は途絶えることなく続く。
ボートを降りて、セリーヌをアパートまで送ると門のところで猫が迎える。セリーヌは部屋でギターを手に1曲だけねと歌う。
時間が迫って立ち去るジェシー。
この差し迫った時間は映画の時間でもあり、見て聞いているこちらまで飛行機の時間を気にして気が気じゃない。
リチャード・リンクレイター監督、イーサン・ホークとジュリー・デルピーが相談して脚本を書いたのが納得できた。
最後にジェシーがニーナ・シモンのCDをかけて、セリーヌが彼女の舞台のことをひとしゃべり、そのままニーナの歌が聞こえつつ映画は終わる。

リチャード・リンクレイター監督『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』

1995年に公開された映画。なにかで知って見たいと思っていたらアマゾンプライムで無料で見ることができた。ああ、ありがたい!
イーサン・ホークがアメリカの青年、ジュリー・デルピーがパリの学生、ふたりは偶然出会い一夜をウィーンの街をさまよって過ごす。若くてインテリで美男美女(笑)。

ヨーロッパを走る列車で偶然出会った若い男女。列車で喧嘩する中年夫婦の声から逃れた女性は席を動いてアメリカ人の若者のそばに座る。若者は本を読んでいて、座って本を読みだした女性になんの本を読んでるのと聞く。彼女が読んでいたのはバタイユだった。話をし出してお互いにお金はないけど時間は今夜一晩自由になるのがわかった。

ぎこちなくいっしょに歩き出すところから、だんだん好意をもっていく過程が自然で楽しい。なんとなく応援してた(笑)。
美しいウィーンの町並みや公園や墓地や川のほとり、レストランやクラブやバーで、関わった人は街の詩人、占い師、バーテンダーなど。そうそうアングラみたいな芝居に誘われたけど行くのを忘れてた。
美しい公園の中にある映画『第三の男』で有名になった観覧車に乗るシーンがあった。観覧席は椅子でなくて小部屋になっていてドアが閉められる。ふたりは自然に立って会話が続く。

映画の内容も映画の製作も9年後の『ビフォア・サンセット』を明日見る予定。期待で胸いっぱい。

ナンシー・マイヤーズ監督、製作、脚本『ホリデイ』

『恋愛適齢期』のナンシー・マイヤーズ監督によるロマンチティックコメディ。丁寧に作ってあって楽しく見た。あんまり完璧なところがちょっとかなわんかったほど。
ハリウッドの映画予告編製作会社経営者アマンダ(キャメロン・ディアス)、ロンドンの新聞社のコラムニスト、アイリス(ケイト・ウィンスレット)のふたりは不当にも恋人が他の女性のものになるはめになった。
ふたりは休暇をとることにし、インターネットで見つけたお互いどうしで住まいを交換して住むことにする。「ホーム・エクスチェンジ」というんだって。
アマンダもアイリスも環境の違いに戸惑いながら2週間の生活を楽しむことにする。

アマンダがイギリスサリー州の小村のコテージに着くと深夜アイリスの兄グレアム(ジュード・ロウ)が何も知らずにやって来た。話しているうちに気が合ってベッドへ。
アイリスはロスアンゼルスで映画音楽の作曲家マイルズ(ジャック・ブラック)と知り合い、近所に住む引退した脚本家アーサー(イーライ・ウォラック)と出会って手助けする。

キャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレットのふたりとも美しくてしっかりしていて涙もろくて正義感にあふれ、いい感じ。ジュード・ロウ、ジャック・ブラックが全然違うタイプで可愛くて、イーライ・ウォラックは貫禄あって、よかった。

見たい映画と読みたい本

先日ツイッターでフォロワーさんのツィートが気になって「いいね」にしておいたのが、「ロビン・ライトが弓を引く姿とかカッコ良すぎでしょ。ワンダーウーマンを育てる女戦士アンティオーペ。」というお言葉。ほんまに颯爽とカッコいいロビン・ライトだ。

わたしは90年代ロビン・ライト・ペンの時代の彼女が大好きだった。『シーズ・ソー・ラヴリー』『メッセージ・イン・ア・ボトル』、もう1本すごくいいのがあったのだがタイトルすら記憶が不鮮明。そのうち思い出すだろう。ショーン・ペンもちょっと出ていたっけ。

気になって出演作を検索したら全然知らなかった『この世の果ての家』があった。原作がマイケル・カニンガムで「1990年に発表され、ピューリッツァー賞を受賞した。2004年に映画化され、カニンガム自身がその脚本を書いた。」とある。
マイケル・カニンガムの『めぐりあう時間たち』は映画もよかったが原作はなおよい愛読書である。もしかして原作があるかもとアマゾンを見たら、なんと角川文庫で『この世の果ての家』があった。即注文。別れたゲイのカップルのうちの一人と同棲している女性の役がロビン・ライト。今日の収穫(笑)。

グレゴール・ジョーダン監督『インフォーマーズ』

ミッキー・ローク出演作つながりで見た2008年の作品。原作は『レス・ザン・ゼロ』でデビューしたブレット・イーストン・エリス。映画『レス・ザン・ゼロ』は見たはずだが全然思い出せない。

最初から美形の男子がたくさん登場たのにはおどろいた。
はじまってすぐにパーティに来た青年が車にはねられて死ぬ。見ていた青年たちのショック。この華やかな生活にも死は忍びよる。
ロサンゼルスに住む金持ちの親たち、そのこどもたちの贅沢な生活と退廃ぶりが描かれている。

登場人物たちに少しの共感も持たないが、そういう状況にいる人たちを描いているのはわかる。
映画プロデューサーのビリー・ボブ・ソーントンとキム・ベイシンガーの夫妻は息子と娘がいて娘が問題を抱えている。夫はテレビキャスターのウィノナ・ライダーと愛し合っているが動きがとれないでいる。妻も息子の友人とできているのだが。

久しぶりのウィノナ・ライダーがきれいだし悩んでいらいらするところもよかった。ミッキー・ロークは顔を見たからいいとする。
1980年代の音楽がバックに流れて懐かしかった。ディーヴォとかね。