スコット・ヒックス監督『一枚のめぐり逢い』

『きみに読む物語』『メッセージ・イン・ア・ボトル』の原作者、人気作家ニコラス・スパークスの作品の映画化(2012)で、日本語の翻訳が出ているそうだ。

イラクで戦っている海兵隊員ローガン(ザック・エフロン)は戦場の危うい場面で美しい女性の写真を拾う。それ以来なぜか運が良くなり何度も命の危機にさらされたのに生き延びて帰国することができた。
故郷のコロラドへ帰ったものの戦場のトラウマで家の人たちとうまくつきあっていけない。写真を詳しく見て背景の灯台から場所を推定し、彼は愛犬とともにニューオーリンズのあるルイジアナ州まで歩いていく。

探し当てた写真の女性ベス(テイラー・シリング)は郊外でケンネルを経営していた。ローガンは命を救ってくれた写真のお礼を言うつもりだったが、仕事を探しにきたと勘違いされ犬とともにそこに住むことになる。海兵隊員ってなんでもできるようで、壊れかけた家を手入れして住み込む。やがては船の修理をして動くようにする。
彼女は祖母と息子と住んでいて自立している。別れた亭主は地元名士の息子で保安官をしていて、いまだにつきまとってくる。ローガンが働き出し、きちんとしているのを見るとローガンの存在が気に食わなくてなにかと絡んでくる。

ローガンがベスに写真のことを言い出せないうちに保安官が突き止めて暴露する。ベスの写真は兄が持っていたものでその兄は戦死したのだ。

誕生日だから『キャロル』

ここまできたらもうどうってこともない誕生日、めでたくもありめでたくもなし。行こうと言っていた外食はお店が日曜日休みで、家飲みに変更。
相方がご馳走してやると買い物に行って白ワインとカルパッチョと野菜料理が山ほど出た。姉と妹から「おめでとう」の電話があって、甥から「おめでとうございます。いくつかは、さておき、これからもお元気で」とメールがあった。姉はお金を渡すから自分で欲しいものを買うようにとのこと。

さて、誕生日やから映画見ようということになって(誕生日でなくても見ているが)、10日ほど前に届いた『キャロル』を初見しようと決めた。わたしは3回目、相方は2回目だが、全然飽きないで最後まで見た。好きという気持ちを暖かく描いたとても素晴らしい映画だ。行き届いていて隙がない。

ツイッターで「キャロラー」という言葉を知った。言葉通りにキャロルとテレーズに入れ込んだ女性たちのことだ。キャロラーが集まって語り合う会が大阪と東京で何度も開かれている。
そして、今度は本(キャロル合同誌)『Flung Out Of Space』が出版された。「24人のキャロラーによるキャロルとテレーズを中心に紡いだ物語」だそうだ。わたしは注文するのが遅れて、初回は品切れなんだけど、増版するのでちょっと待つことになったが楽しみだ。これが自分へのバースディプレゼント。

ジョン・カーニー監督『はじまりのうた』をもう一回

8月29日に見たのをもう一回見た。見逃していたところや字幕を読んでいて気がつかなかった画面を再度見て納得できた。
珍しくベッドシーンのない映画で、音楽で知り合い、音楽で友情を深める。深夜の散歩、深夜の川べりのベンチで音楽を聞き交わされる会話が清々しい。

デイヴとグレタはニューヨークへ出てきてメジャーデビューした。デイヴはツアーに出てしまい、グレタは荒れる。友だちがライブハウスに連れて行って歌わせる。偶然その場にいた落ち目のプロデューサーのダンがだんだん引き込まれていうところが素敵。ギターの弾き語りなんだけど、置いてある楽器が勝手に鳴っているように動いているシーンがよかった。作り手と聞き手が共振して。そして実際にいろんなミュージシャンが共に演奏するようになる。参加の仕方もそれぞれユニーク。

デイヴはメジャーな歌手になっていて、一緒にやっていこうとグレタを誘う。彼のコンサートに招待されてグレタは出かける。グレタが作った歌をグレタが思うように歌いデイヴはグレタに呼びかける。しかしグレタは超満員の会場を去っていく。

デイヴのようにメジャーで生きていくのも一つの行き方。グレタにもグレタの行き方がある。二回見てよかった。

ジョン・カーニー監督『はじまりのうた』

『ONCE ダブリンの街角で』がとても素敵だったジョン・カーニー監督の2013年の作品。ニューヨークのさまざまな街角でシンガーソングライターのグレタ(キーラ・ナイトレイ)が歌うシーンが素晴らしい。
キーラ・ナイトレイの作品は『プライドと偏見』しか見たことがなかったが、歌がとても素敵で毅然とした態度の歌い手役がとてもよく似合っていた。

グレタはイギリスからニューヨークへ恋人のデイヴとやってきたが、デイヴはスター路線をまっしぐら、新しい女性と付き合いだしてツアーへ。残った傷心のグレタは友人のスティーブのアパートに行くと彼はライブバーへ連れて行き歌わせる。偶然店に来ていた落ち目の音楽プロデューサーのダン(マーク・ラファロ)がグレタの歌を聞いて一目惚れ、一緒にアルバムを作ろうと誘う。
ダンは妻娘と別居して、音楽会社の仕事もなくし酒びたりの生活をしていたが、グレタの歌を世に出そうと動き出して人生を取り戻す。
地下鉄駅や公園や川のほとりや街角で、警察につかまりそうになりながら、うるさいと居住者にどなられながら曲は出来上がっていく。

デイヴが本物のスターになっていくのをライヴ会場でグレタは見た。わたしは違う。
アルバムは1ドルでネット限定販売することになった。

『キャロル』スペシャル・エディション [Blu-ray]が届いた

アマゾンに注文してあった『キャロル』スペシャル・エディション [Blu-ray]が今日届いた。封を開けたらBlu-rayとDVD、それに特典の絵葉書2種類とパンフレットが入っていてうれしい。あたしって小学校の中原淳一時代からいっこも抜けてないとまた実感(笑)。

明日は翻訳ミステリ読書会があるので、出かけるまで課題本と取り組むつもり。早く買ったのに、読みかけで他の本に移ってしまい、社会関連、ゲイ小説、四方田さんの本と好みに従って移動。結局ぎりぎりになって課題本を読んでいる。
『キャロル』のほうはわたしは映画館で見たから余裕があったが、相方が見たがるので今月の11日にU-NEXTに700円払って見た。そんなもんで今日は慌てることはない、ここにあるんやから。これから何度でも見られるんやから。

プリンタなどが置いてある机の一画にいま読みかけている本とお気に入りのDVDが並べてある。『高慢と偏見』『美女と野獣』『レベッカ』『赤い靴』『マンハッタン花物語』『ビフォア・ミッドナイト』『ジェーン・エア』『赤い河』。ここに『キャロル』が並ぶ。

ウディ・アレン監督・脚本『マッチポイント』

すごくおもしろい映画だった。ウディ・アレン監督の才気があふれているが、これみよがしのところがない。ほんとによかった〜
2005年のイギリス映画。大邸宅やテニスコートやロンドンの街やレストランや、そしてテームズ川と美しい風景がたくさん出てくる。美しいオペラの名曲(ドニゼッティ作曲のオペラ『愛の妙薬』から「人知れぬ涙」。歌っているのはカルーソー)が映画のはじめと終わりに流れ、金持ち一家はしょっちゅう劇場や美術館へ行く。ワインの好みもよろしいのでしょうね。

アイルランド出身のクリス(ジョナサン・リース・マイヤーズ)はプロテニスでいい線までいったが引退してテニスクラブにコーチとして就職。そりゃもう優雅なコートでお金持ちの子弟が楽しくプレーするのをそつなく教える。大企業の御曹司トムと親しくなり、その妹クロエ(エミリー・モーティマー)と付き合うようになった。読書家でオペラが好きなクリスは兄妹の家によばれて父親に気に入られる。ところが兄妹の家で出会ったトムの恋人で女優志望のノラ(スカーレット・ヨハンソン)に一目惚れしてしまい、クロエと結婚しても忘れられない。ノラはトムと別れてアメリカへ戻ったがまたイギリスに来て仕事を探している。クリスは子どもが欲しいができないので不妊治療をはじめる。クリスの目をごまかしてノラと会う日々、ノラのほうが妊娠する。ノラはクリスの離婚を待ったが埒があかないので攻め立てる。

クリスは計画を練り強盗殺人に見せかけてノラの隣人を殺しノラを殺す。ノラの日記によってクリスは疑われるが、運良く容疑が晴れる。テニスの試合にひっかけた証拠場面がうまい。
刑事がひとりクリスを疑うのが、イギリスの警察に敬意を表しているようでおもしろかった。

クリント・イーストウッド製作・監督・主演『マディソン郡の橋』

散骨部分を見たくてレンタルDVDで見た。1995年製作だから21年前の映画だ。1995年の1月に阪神大震災があった。当時は映画も原作小説もずいぶんと評判になって知り合いはたいてい見に行ってた。わたしは評判が静まったころに小説は図書館で借りて読み映画はレンタルビデオで見た。それからテレビ放映で一度見たっけ。
わたしはずっとクリント・イーストウッドの大ファンで、たいていの映画は映画館で見てきたが、震災の頃から映画館には足が遠のいていまにいたる。

最近クリント・イーストウッドが共和党のトランプ氏を推しているのをメリル・ストリープがたしなめたとかネットニュースで読んだが、『マディソン郡の橋』からの付き合いやったのね。
アイオワ州マディソン郡ウィンターセットに造られた特設セット『フランチェスカの家』で42日間にわたっての撮影だったそうだから、ずいぶんと親しくなったでしょう。

フランチェスカは農場の主婦といっても元々はイタリア人で、第二次大戦のときに進駐してきた米兵と結婚して、アイオアにきた女性である。夜の散歩でイェイツの詩を口づさむとロバートがあとを継ぎ、アイルランド人だからと言ったけどインテリどうし。
ありえない恋がアメリカの片田舎で花開く。古い屋根付橋(やねつきばし)の写真を撮りに来たカメラマンと道順を教えた農場の主婦の恋。夫と子どもが子牛の品評会に出かけた4日間という日にちが、燃え上がった恋を消す時間としてよかったのね。

夫が運転する車に乗って買い物から帰るフランチェスカと家路につくロバートの車が交差点で前後になる。夫はわかっているけど何も言わない。妻は涙を拭いてじっとしている。濡れながらクリント・イーストウッドが立っている。

トッド・ヘインズ監督『キャロル』をU-NEXTで

ヴィク・ファン・クラブの会報製作時期になって原稿がいっぱい集まっている。いろいろとやることがあるのに仕事が一段落した相方が映画を見ようと言い出した。恋愛ものなら見るわと答えたら、あちこちネットを調べて、おいおいU-NEXTで700円ほどかかるけど『キャロル』が見られるぜ、おれはいますぐに見たいなあとのこと。わたしがキャロル、キャロルとうるさいので、まず小説のほうを読んで感心し、映画を早く見たいなあと言っていた。ええっ、ほんま?ほな見ようやとわたし。
『キャロル』のBlu-rayを注文してあるのが26日に届くが、それよりも早く見られるのなら見たい。こういうときは話が早い。さっそくiMacの前に並んで座った。

ツイッターでみなさんの何十回見たというツイートを読むと、映画館で一度見ただけだからなんだかしぼむ。あのシーンと書いてあっても記憶が不確かだ。
いま見終わって「やっぱりよかったなあ、Blu-rayが届いたら何度でも見よう」「おれは小説よりずっと映画がよかったわ」なんて老夫婦の会話(笑)。

50年代の同性愛が罪であった時代に書かれたパトリシア・ハイスミスの小説をトッド・ヘインズ監督が去年映画化した。「愛」をテーマに一歩も引かずに描ききっているのを今日は強く感じた。法律も家族も自由な女性が愛に生きようとするのをしばれない。
キャロル(ケイト・ブランシェット)とテレーズ(ルーニー・マーラ)は、愛に生きようと決意した。お互いの顔を見合う最後のシーンにじーんとなった。

リチャード・リンクレイター監督+イーサン・ホークとジュリー・デルピー『ビフォア・ミッドナイト』

ようやく3部作を見終わった。偶然の出会いから18年経って、いまふたりは双子の女の子の親である。一家(ジェシー、セリーヌ、前妻の息子、双子の娘)はギリシャの作家に招かれて2週間のバカンスを過ごす。ジェシー(イーサン・ホーク)は1日早くアメリカに帰る息子をを空港で見送る。一生懸命会話する父親とクールな風を装う息子。いまの時期に息子と離れたくないからシカゴで暮らしたいジェシー。
車にもどるとセリーヌが待っていて娘たちは眠っている。前作同様に二人の会話が続く。セリーヌは仕事を含めいろんなことに不満を持っているし、ジェシーはアメリカに戻って子どものそばに住みたい。

招待先の家に戻ると、ジェシーは作家たちと庭のテーブルで懇談、セリーヌは料理の手伝いに台所へ。
休暇最後の晩ご飯はご馳走とワインで会話がはずむ。カップルたちののろけが入った会話が楽しい。ジェシーもセリーヌもみんなにウケる話をする。
その晩は子どもを預かってくれて、2人で過ごすようにホテルをとってくれて、豪華ホテルにふたりは到着する。ホテル受付でも本にサインを頼まれるジェシー。

ホテルで円満に終わるかと思ったら、愛のシーンになるはずのところで、どんでん返しだからたまらない。言いたいことをみんな言うというより叫びあうけど、セリーヌの怒りは収まらなくて外へ出かけてしまう。
海辺のテーブルの席についたセリーヌの前にジェシーが現れて手紙を読む。

『ビフォア・ミッドナイト』は明日とどく

おととい『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』を見て、昨日は『ビフォア・サンセット』を見た。アマゾンプライム会員が無料で見られるのはこの2本である。2日にわたって書いた通りすごくおもしろい映画で、このあとどうなったか知りたくてしょうがない。DVDが出ているのがわかったので、これは買うことにした。明日の午後に届くように注文したので今夜は一休み。ネットでいろんな人たちの紹介文や感想を読んでいると、ますます見たくなってきた。

最初の作品は1995年で、次は9年後の2004年、それからまた9年後の2013年に『ビフォア・ミッドナイト』がつくられて、わたしは明日見ることができる。もしまた9年後に4作目ができれて、運良く生きていられたら、わたしはようやくリアルタイムで見ることができる。

昨日、そのことをツイッターに書いたら「深夜1時くらいから観ることをオススメします。」との返信があった。わたしは土曜日は朝から姉の家に行くので、金曜日の夜はあんまり夜更かしできない。「多分あさっては深夜1時頃に見終わるかと思いますが、2度目に見るときはそうしますね。」と返信した。喜んでいるときにもう一度喜ばせてくれるなんてうれしいね。