おばはんたよりにしてまっせ 映画「夫婦善哉」

姉の家のテレビで「夫婦善哉」を見た。原作が織田作之助、1955年の豊田四郎監督作品。主演が森繁久彌(柳吉)と淡島千景(蝶子)、雇い主が浪花千栄子で、柳吉の妹が司葉子という豪華な配役。わたしはいままで見たことがなくて「おばはんたよりにしてまっせ」というセリフのみ知っていた。

1932年(昭和7年)ごろの大阪、船場の化粧品問屋の息子柳吉はたよりないぼんぼんである。柳吉の妻は病気で娘のみつ子を残して実家に帰っている。柳吉が曽根崎新地の売れっ子芸者蝶子と惚れ合って駆け落ちすると父親は柳吉を勘当する。
熱海の旅館で地震にあうシーンがあって、やがて大阪の蝶子の実家にもどってくる。いそいそと世話をする蝶子だが、焼きもちも激しい。
蝶子はヤトナ芸者となって稼ぎ貯金をするが、柳吉はそれを持って松島遊郭へ遊びに行ってしまう。
二人で飛田に食べ物屋の店をもつが、賢臓結核にかかった柳吉の入院費のために店を売るはめになる。それでも有馬温泉に養生に行った柳吉は勝手に出かけてしまう。
結局、船場の店は妹が婿養子をとることになり、父親も死んで柳吉は戻れなくなる。

法善寺で祈る蝶子のシーンが多くてやるせない。柳吉はいつのまにか蝶子を「おばはん」と呼ぶようになっている。
蝶子は自由軒のカレーが好きで、一人でも相手がいても食べに行く。柳吉とテーブルの下で足をからますシーンの
最後は法善寺横町の夫婦善哉で二人でぜんざいを食べる。「たよりにしてまっせ」という柳吉。店を出ると雨が降っていて二人はショールをかぶって歩いていく。この二人これからどないなるのやろ。切ないラストシーン。

森繁久彌の白いシャツとステテコと腹巻き姿がよかった。昔の父親の夏の姿はあんなんやったなと郷愁を誘われた。森繁久彌というと晩年の姿しか思い出さないが、色気のある中年男やったんや。淡島千景はちょと上品過ぎたが、二人のやりとりの間合いが良くて気持ちよい映画だった。