去年のいまごろ姪の家に行ったときもう20年以上前に亡くなった姉の本箱がそのままにしてあった。家を建てたときに作ったすごくでっかい本箱で、文庫本が置いてあるところは二重になっている。在庫を見るだけで大変だったが、欲しい本があれば持って行ってねと言われたのでミステリーを何冊かもらった。
P・D・ジェイムズやモース警部ものはすぐに読んだんだけど、ルース・レンデル「乙女の悲劇」(ウェクスフォード警部もの10冊目)を本棚の隅っこに置いたまま忘れていた。取り出して読んだらおもしろかった。なんちゅう贅沢(笑)。
ルース・レンデルがずっと嫌いだったと思い込んでいたが、数年前にそれほどいやでもないなと思っていくらか読んだのだった。いま調べたら「運命の倒置法」「階段の家」「わが目の悪魔」「ひとたび人を殺さば」「薔薇の殺意」を読んでいるのがわかった。
ロンドンから近いサセックス州の真ん中にある大きな町キングズマーカムがウェクスフォード警部が妻と住む町。町の外れの草むらで中年女性ローダ・コンフリーの死体が見つかった。
ローダはこの町出身で、若いころにサッカーくじに当たって大金をつかみロンドンへ出て行った。ロンドンで仕事をしていい暮らしをしているらしい。ときどき父親が入院している病院へ派手な身なりで来ていた。調べていくと彼女のロンドンの連絡先をだれも知らない。ロンドンでなにをしていたかもわからない。
死体を解剖してわかったことのひとつはローダが処女だったということ。
ロンドンへ出かけたウェクスフォード警部は、旧知の刑事たちに助けを借り足と頭脳を使ってローダを追う。ローダの持ち物から男性作家の存在が浮上する。
夫&男性への批判がいっぱいの長女が口走った言葉から「イーオニズム」という言葉を思い出し、ハヴロック・エリスの本を図書館で読む。導き出した結論に部下たちはついていけないほど。最後のウェクスフォード警部の解説がいい。
長女シルヴィアが夫と喧嘩してこども二人を連れ家に来ているのだが、その喧嘩の理由を「ウーマン・リブですよ」と妻のドーラが言う。
本書の書かれたのは1978年、おお、わたしがパンク・ロックをはじめて体験した年だ。日本のウーマン・リブはいつ頃だったか調べてみなきゃ。
働きたい、資格を持ちたい、と切実に言うシルヴィア、結局は夫が迎えにきてくれ、皿洗い機を買ってくれたので機嫌を治して帰るのだが。
(深町真理子訳 角川文庫)