スティーブン・フリアーズ監督『ハイロー・カントリー』

マックス・エヴァンスの同名の小説をサム・ペキンパーが映画化を望みながら実現しなかったということを知ったマーティン・スコセッシが製作した映画(1999)。スコセッシは「グリフターズ」を製作したときの監督スティーブン・フリアーズを起用した。(スティーブン・フリアーズ監督の「プリック・アップ」はロンドンのゲイカップルを描いた素晴らしい作品だった。他の映画もこれから見ていくつもり。)

第二次大戦が起こる直前から物語が始まる。
最初のシーンで若い男がショットガンをにぎってじっと待っている。
そこから過去にさかのぼって、ビッグボーイ(ウディ・ハレルソン)とビリー(ビリー・クラダップ)が知り合ったいきさつが語られ、仲間とともに牧場をやっていくことになる。まだカウボーイが生きていけた時代。
第二次大戦が始まって二人とも戦争に行く。
戦争が終わって牧場にもどってくると、戦争に行かなかった連中が支配する資本の時代に変わっていた。弟のリトルボーイは資本家牧場主の手下になっている。牛をカウボーイが追うのではなくトラックで運ぶ時代になっていた。

ピートには美しい恋人(ペネロペ・クルス)がいるのだが、人妻のモナ(パトリシア・アークエット)に惹かれる。ところがモナとビッグボーイが恋仲になって逢い引きの手助けをするはめに。二人の仲は周囲の知るところとなり、酒場での喧嘩があり一触即発の事態になる。モナもビッグボーイも真剣に愛し合っているのが愛おしい。
ピートがなぜあそこで待っていたか、そこでなにが起こるか。哀愁に満ちた最後に泣いた。

モナのドレス姿が美しい。あのころの映画では女優たちはみんなあんな感じのドレスだったなぁとキャサリン・ヘップバーンやベティ・デイヴィスやジンジャー・ロジャースを思い出していた。
馬が走っていた最後の時代を描いた映画だった。西部劇へのオマージュと思った。

サム・ペキンパー監督の作品はたくさんあるが、見たのは「ワイルド・バンチ」「ゲッタウェイ」「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」「ガルシアの首」「コンボイ」と少ないけれど、それぞれ強烈だった。「ガルシアの首」が最高。