グレアム・グリーン『情事の終わり』

先日ニール・ジョーダン監督の映画「ことの終わり」を見ていて、グレアム・グリーンの「情事の終わり」の映画化と気がついた。続いてずいぶん昔にデボラ・カー主演の「情事の終わり」を見たこと、続いて原作を読んだことを思い出した。

第二次大戦中のドイツ軍によるロンドン爆撃はすごかったようで、サラ・ウォーターズ「夜愁」の空襲シーンを思い出しもした。

人妻のサラと独身の作家モーリスが出会って真剣に愛し合う。ふたりが逢い引きしているときに大爆撃がありモーリスが直撃される。サラは彼が死んだと思いこみ、彼を生き返してくれるように神に祈る。彼を生き返えらせてください。彼が生き返ったらわたしは彼を諦めます。モーリスは生還する。そして、サラはモーリスから去った。

もし、わたしがそういう場面でもし誓ったとしたらやっぱり誓いを守るだろうか。誓うはずがないから、そういう設問はありえないけど。
イーヴリン・ウォーの「回想のブライズヘッド」を読んで先月感想を書いたが、これも主人公の画家がカトリックの女性と愛し合いながら、女性の方から拒絶される物語だった。
グレアム・グリーンとイーヴリン・ウォーは同時代の作家だった。
「月が上がって沈むまでの人生なのだわ。そのあとは闇なのね」という「回想のブライズヘッド」の最後のジューリアの言葉がまた甦った。
(田中西二郎訳 新潮文庫 2006年版〈1959年初版〉)