新刊書や雑誌は本屋で手に取って買うのが好き。去年の末から「ミステリーズ!」2月号を買わなくっちゃと思っていたのに買いそびれていた。堂島ジュンク堂に行けばバックナンバーも置いてある棚があってさっさと買えるので、他で探す気にならない。ようやく先週の土曜日に手に入れた。
最近は北欧ものを読むことが多いが、たいていが警察ものである。いちばん最近に読んだ「キリング」もデンマークの女性警部補が頑張っている。そこへニューヨークの女性私立探偵フィリス・マーリー登場したのにはおどろいた。木村さんの作品ならジョー・ヴェニスではないの? 読んでわかったが、フィリスは15年前に亡くなった父がいた探偵社で働いていたが2年前に独立した。フィリスの父とヴェニスは同じ探偵社で働いていたことがあり、ヴェニスはフィリスのことを実のおじのように気にかけている。今回、出版社の仕事にフィリスを推薦したのはヴェニスだった。フィリスは30歳代前半の鋭い目をした飾らない女性である。
エンパイア・ステート・ビルが見渡せるビルの一室でミステリ雑誌《ダーク・シャドウ》編集長のタラが待っていた。応募してきた新人の原稿に不審なところがあるという。盗作かもしれないので調査したい。私立探偵小説に詳しいヘイウッドにも会って話を聞くように。とのことで、フィリスは原稿を読んでからヴェニスと同じビルに住むヘイウッドを訪ねる。
作者の住まいに出かけると男が倒れていた。
フィリスは警察に連絡する前にiPhoneで写真を撮る。死体の他にも本棚の本のタイトルや著者名もわかるように撮り、自分のiPadに送信してiPhoneのほうは削除する。
「フィリス、死体を見つけるのが上手なのね」と言いながら登場したのはマンハッタン・サウス署殺人課のアンジェラ・パランボ警部補。フィリスは待たされている間に「退屈になったら、腕立て伏せでもやってますわ」だって。
いらいらせずに楽しんで読める。そして、50年代、60年代の私立探偵小説作家の名前がぞろぞろ出てくるのも好きな者にはたまらん。わたしはそれらをすこし読んでいて、かなり名前を知っている。
(「ミステリーズ!」2013年2月号 東京創元社 1200円+税)