本書はドイツのホーフハイム刑事警察署の主席警部オリヴァー・フォン・ボーデンシュタインと同警部ピア・キルヒホフのシリーズの3冊目になる。訳者あとがきに、ノイハウスの真価がわかる作品ということで、3冊目の本書と4冊目の「白雪姫には死んでもらう」を紹介することになったそうだ。2冊が出たら最初から全部の訳が出てほしいなぁ。
オリヴァーとピアの組み合わせは絶妙だ。落ち着いたオリヴァーとひらめきのピアのコンビはそれぞれの役回りで事件を解明して行く。違う方向に行ってしまうこともあるが、諦めないで取り組んで行く。
新しく署長として赴任してきたのはオリヴァーが昔つきあっていたニコラ・エンゲル警視で、オリヴァーは彼女と別れていまの妻と結婚したといういきさつがある。
ピアはいま新しい恋人と熱々の関係。長い間連れ添った監察医のヘニングと離婚したのだが、仕事では協力している。今回も署長に内密にポーランドへ友人のセスナ機でヘニングと飛ぶ。
事件は第二次大戦にさかのぼる。ユダヤ人として生きてきたゴルドベルグの遺体を調べると、ナチスの武装親衛隊員である証拠の血液型の入れ墨があった。しかも古参隊員だったとわかる。続いて起きる同じような事件はみんな過去につながりがあった。
禁断の恋もあってロマンチック好きも満足できる。最後のシーンがすごくよかった。寝る前に最後の章をもう一度読もう。
(酒寄進一訳 創元推理文庫 1200円+税)