ヨハン・テオリン「黄昏に眠る秋」

去年の4月に出た本で、書店で見たときに今度買おうと思ったまま忘れていたのが図書館にあった。タイトルが好みなのとスウェーデンの作品というのが気になっていた。
他の本を読む合間に読んでいたのだが、途中から用事をほったらかしての熟読になった。

いま世界から注目の北欧ミステリの中でも特に注目されている作家、ヨハン・テオリンの2007年に出版された長編デビュー作である。
バルト海にある南北に長い島エーランド島が舞台になっている。スウェーデンはヴァランダー刑事でおなじみのヘニング・マンケルの作品の地だから、主人公の元夫がマルメにいると書いてあると、「ああ、あそこか」なんて(笑)。

1972年、6歳の誕生日をひかえた少年イェンスは初めて祖父母の家の壁を越えて庭の外の世界に踏み出した。やがて濃い霧が出てきて帰る方向がわからないくなった。そこへ大男のニルス・カントが現れる。もうイェンスは逃げられない。
家族や村人の捜査もむなしくこどもは見つからなかった。
それから20年経ったいま、看護士をしている母親のユリアは精神科治療のために病欠の延長を病院に電話申請する。
夜になると赤ワインを開けグラスを傾けるとあっという間に2本飲んでしまった。そこへ父親のイェルロフから電話がかかり、イェンスがあのとき履いていたサンダルの片方が郵便で送られてきたという。

物語は1936年にさかのぼる。海にいた10歳のニルスは、3歳年下の弟が母からもらったタフィが自分より3個多いのが気に入らず水死させてしまう。そこからニルスの悪行がはじまる。

イェルロフは元は貨物船の船長だったが、80歳になり高齢者ホームにいる。シューグレン症候群にかかり手足がしびれて歩けないときがある。
ぎくしゃくした関係のままユリアは父親のことをイェルロフと名前で呼んでいる。島に来た夜は父親の持ち物のボートハウスに泊まることになる。夏は避暑地として観光客で賑わう島だが、別荘はみんな閉ざされてさびしい。
イェルロフはサンダルの件からもう一度事件に向き合って考えようと、ユリアとともに動きはじめる。
(三角和代訳 ハヤカワポケットミステリ 1800円+税)