図書館で借りたもう1冊は淡い色合いだけど風刺にあふれた本。
〈訳者のことば〉によるとアニタ・ローベルは「えらぶっている人をへこますような絵本をかくのが好き」なんだって。ニューヨーク在住で「ふたりはともだち」の絵本作家アーノルド・ロベールとブルックリンで芝居をしているときに出会って結婚した。
何不自由のないおひめさまは、たくさんの召使いに囲まれて目が覚めたときから世話をされるのに慣れている。両親はりっぱなおひめさまに育てるべく勉強や作法を教え込む。誕生日のパーティが催される日、椅子に座って行儀よく待ちながらおひめさまは思う。「だれも誕生日おめでとうと言ってくれないわ」。
お城の部屋の外から音楽が聞こえてくる。窓からのぞくと手回し風琴ひきと芸をするさるがいた。おひめさまは二人を誕生日パーティに招く。
パーティがはじまってたくさんの人が集まり盛り上がるが、手回し風琴ひきがいない。外にいる彼らをロープでひっぱりあげて踊っていると招かざる客として捕まえ地下の牢屋へ入れてしまう。
夜中におひめさまは密かに助け出しいっしょによその国へ逃げる。そして芸をしながら町から村へまわり歩いてしあわせ。
1973年の作品だが古典の物語と違って主張のある作品だ。装飾的なのだが風刺的な絵なのもいまの絵本だなと思う。でも伝統を重んじるかのような扉や文字ページの帯のデザインがおもしろい。見返しいっぱいの花模様がロマンチック。実はこの模様をゆっくり見ようと借りてきた。
(猪熊葉子訳 文化出版局 1165円+税)