何度も書いているけど、本格ミステリはこどものころから親しんでいたが、いっときミステリから離れていて、もどってからはハードボイルド一辺倒になった。浅羽莢子さんの訳が出るまでのドロシー・L・セイヤーズの戦前の古本をいくらか読んでいたが。
P・D・ジェイムズもそんなわけで読んだことがなく、長いことミステリファンの友だちもいなかったから名前さえ知らなかった。長生きしててよかった〜(笑)
今日これから「策謀と欲望 上下」の感想を書くが、これでアダム・ダルグリッシュ シリーズ完読だ。
シリーズではない「罪なき血」は持っているのでそのうちゆっくりと読む。SFの「人類の子供たち」は読んでないが映画化された「トゥモロー・ワールド」を見たからいいとしよう。
2010年に初めて読んでから何冊か読んだままだったが、今年になって女性私立探偵コーデリア・グレイものを読んだのがきっかけになって、まだ読んでなかったのを読みだした。
1962年 女の顔を覆え
1963年 ある殺意
1967年 不自然な死体
1971年 ナイチンゲールの屍衣
1972年 女には向かない職業☆
1975年 黒い塔
1977年 わが職業は死
1982年 皮膚の下の頭蓋骨☆
1986年 死の味
1989年 策謀と欲望
1994年 原罪
1997年 正義
2001年 神学校の死
2003年 殺人展示室
2005年 灯台
2008年 秘密
☆印の2冊はコーデリア・グレイものだが、「女には向かない職業」には、ダルグリッシュが登場しているし、「皮膚の下の頭蓋骨」では思い出と噂話に出てくる。
「策謀と欲望 上下」
物語の最初は若い女性が帰りのバスに乗り遅れ、ヒッチハイクをしようとするところ。彼女が連続殺人鬼“ホイッスラー”4番目の犠牲者となる。
ダルグリッシュは2週間の休暇を取ることにして仕事の整理をすませた。行き先はただ一人の叔母ジェインが住んでいたノーフォークの北東海岸。以前サフォークに住んでいた叔母が風車小屋を改造した家屋を買って引っ越していたが亡くなったので遺産整理をせねばならない。
出かけるところを同僚に呼び止められる。これから向かうところは連続殺人鬼の“ホイッスラー”が出没している。担当者は元ロンドンにいたリカーズ主任警部である。すでに彼が行くことは伝えてあるとのこと。
出かける前に詩集の出版社に立ち寄る。彼は仕事の収入がある上に叔母の遺産もあるので本の売上は気にしていない。編集者は彼の行き先の近所に住む料理研究家のアリス・メイアーに料理本のゲラを届けてほしいという。アリスの弟はイギリス屈指の物理学者で、すぐ側にあるラークソーケン原子力発電所の所長である。
アリスの家に行きゲラを渡すと食事に招待される。その帰りに会った子どもたちを車に乗せて送ってやり、その父の画家に会う。
アリスに招待されてこの辺りに住む上流人たちの集まりに行くと、素晴らしい料理とワインが供された。アリスの弟アレックス、原子力発電所の幹部職員たち。毛色の違うメグはロンドンで学校教師をしていたが進歩派による言葉狩りで辞めざるをえなくなり、そのあとに夫が事故で亡くなったので、この地の司祭館の家政婦募集に応じた。
パーティが終わるとダルグリッシュはメグを送って行き、ここへ来た事情や村の様子を聞く。
(青木久恵訳 ハヤカワ文庫 上下とも640円+税)