「最終目的地」(2009)はアイヴォリー監督のいちばん新しい作品。いままで見たなかでいちばんよかった。すぐに原作(ピーター・キャメロン)を読みたくなっていまアマゾンに注文した。
オマー(オマー・メトリー)はイラン系アメリカ人、大学で文学の教師をしており、同僚のディアドラ(アレクサンドラ・マリア・ララ)とは恋人同士である。
オマーが大学に残るためには博士号をとらなければならない。自殺した作家グントの伝記を書くことにして、作家の遺族に申し込むが拒否されてしまう。ディアドラの勧めもあって、直接頼もうとオマーは作家が暮らしていた南米ウルグアイへ向かう。
たどり着いたのは大きな邸宅で、グントの兄アダム(アンソニー・ホプキンス)と恋人のピート(真田広之)、グントの妻キャロライン(ローラ・リニー)、愛人アーデン(シャルロット・ゲンズブール)とその娘の5人が不思議な共同生活をしている。
近くにホテルがなく、オマーは伝記執筆の許可が出るまで粘るつもりでしばらくこの家に泊めてもらうことになる。
キャロライン一人が拒否しているのをなんとか応じてもらおうと、毎日オマーはアーデンの手伝いをしたり、アダムと話したりしながら待つ。アーデンとだんだん心が通い合っていく。
ある日、ピートの蜂の世話を手伝っていて蜂アレルギーのために危篤になる。アーデンがディアドラに連絡したので彼女がやってきて、てきぱきと看病し、伝記執筆の交渉に口を出す。芸術家肌のキャロラインと実務家肌のディアドラの会話は噛み合ない。
ピートは徳之島生まれの日本人で、アダムとは同性愛の生活が25年続いてきた。いまやピートは40歳になり、アダムはお金を工面してピートを独立させてやりたいと思っている。母親が遺した宝飾品を内密に持っていたのを外国でへ持ち出して売り資本金にしてやろうと考え、オマーに片棒を担がそうと画策する。ビートはそれを聞いて拒み、いまのここでの生活が自分の最終目的地だと言う。愛し合っているふたりが向き合うシーンがいい。
キャロラインが折れて伝記執筆OKとなり、オマーとディアドラはようやく帰国できる。別れを惜しむオマーとアーデン。
雪の季節になりオマーはアメリカで教師を続けている。教室でトマス・ハーディの「テス」からの一行を学生のために黒板に書く。そしてその言葉に押されて、南米ウルグアイのアーデンのところへ荷物をまとめて発つ。
オマーにとって最終目的地はアーデンのいるウルグアイなのだ。
トマス・ハーディの「テス」を読まなくっちゃ。何十年も前に読んだだけだから。先日見た映画「トリシュナ」は「テス」の映画化だったし、背中を押される。