サリー・ポッター監督『タンゴ・レッスン』

「贅沢貧乏」という森茉莉の本のタイトルを思い出した。いまのわたしの映画状況はまさに「贅沢貧乏」という言葉がぴったり。貧乏しているけどある方のおかげでわたし好みの映画が見られる。こんな贅沢なことはない!!

サリー・ポッター監督の映画は「オルランド」と「耳に残るは君の歌声」の2本を見ている。2本ともよかった。あと1本「愛をつづる詩」は未見だがここにある。計4本で全部らしいので少ないなと思ったら、映画だけでなく音楽やダンス方面でも活躍されているのがいまわかった。

「タンゴ・レッスン」(1997)は、サリー本人が映画監督サリー・ポッターの役で出ていてタンゴを習って踊る。細くて力強くて美しい肉体。
レッスン1からレッスン12まで物語がある。

サリーは自作映画の構想を練っている最中である。映画全体は美しいモノクロで、構想部分はカラーで現される。
考え疲れてたまたま入った劇場でパブロ・ヴェロンが踊っているアルゼンチンタンゴを見る。サリーは見惚れてしまい、タンゴを習おうとパブロを訪ねる。
自室の床を工事することになり、サリーはブエノスアイレスへ行きレッスンを続ける。
タクシーの運転手の言葉が印象に残った。
「精一杯生きろ、そして苦しめば、タンゴがわかる」

パリにもどったサリーはパブロに会いに行きレッスンを頼むと、練習したなとパブロが言い、二人の仲は熱くなる。そして二人ともユダヤ人ということでいっそう親しくなる。
ときどき構想中の映画シーンが入る。その脚本を持ってハリウッドへ行くサリーを送っていく飛行場のエスカレーターのシーンがよかった。

パブロが踊るフレッド・アステアみたいな部屋の中でのタップダンスもよかった。
だが、やっぱりタンゴだ。人生を語り踊るのがタンゴだなとつくづく思った。