子どものときに読んだ本って忘れないものだ。忘れてしまった本は覚えてないのね。『半七捕物帳』を読んだのは中学のとき。色っぽいしぐさの描写が気に入ったし、粋な会話も気に入った。それから何度読んだかわからないくらい読んでいるが、半七親分いまも大好きである。
最近読んだのはiPhone3Gを買ったときだから2008年か、使い方がよくわからなかったけど持ち歩いて青空文庫の『半七捕物帳』を読んでいた。出先(ライブの待ち時間とか)ではiPhoneで読み、帰って続きをMacで読んで江戸情緒を楽しんだ(笑)。
どんなミステリにも言えるけど、『半七捕物帳』は半七の性格や推理力や言葉遣いの魅力で惹きつけられる。そしてあっと言う間に江戸の雰囲気になじむ。そしたらもう虜になってしまう。傘を持って家を出て雨が降らないと「傘がお荷物か〜」と半七調でつぶやくようになる(笑)。
そんな半七ファンだから、好きな(最近好きになったばかりとはいえ)詩人が『半七捕物帳を歩く』のを知ったからには読まないとね。
本書は1980年出版だからもう35年経っている。35年前の東京で江戸を探って、そのときに変わったと書いているところはすでに大変わりしてるだろう。江戸を感じたところだってもうないだろうな。
わたしは東京生まれだけど学齢前に大阪に引っ越したので東京の記憶はほとんどない。でも一応わたしのふるさとの土地を歩く詩人の言葉をありがたく読ませてもらった。よく歩くが、よく酒を飲む詩人だ。すごく楽しんで読んだ。
(田村隆一全集第4巻 河出書房新社 4500円+税)