G・K・チェスタトン『ブラウン神父の知恵』

昨日話題にした『半七捕物帳』とブラウン神父ものはよく似ているとさっき『ブラウン神父の知恵』を読みながら思った。時代は半七のほうが古いが、どちらも「古き良き時代」という感じがするところが似ている。

「賢い人物は、木の葉をどこに隠すかね?そう、森の中だ。森がなければどうすればよい?簡単だ、森を作れば良いのだ。」(ピクシブ百科事典「ブラウン神父」より)

こどものとき家にあったブラウン神父の物語を読んだ。おもしろくないのだがヘンな魅力があったように思う。それから10年以上経って花田清輝が評論集の中で上に引用した「木の葉を隠すのは森の中」を語っているのを読んでブラウン神父を懐かしく思い出したのだった。でもずっと本は読まず、たしか『ミステリマガジン』の短編特集号みたいなのに載っているのを2・3編読んだだけだった。
今回新しい訳本が出ているのを知らなかったが、偶然懐かしい本屋で見かけて買った。縁があったんだ。

G・K・チェスタトン(1874–1936)ロンドン生まれ。本書にブラウン神父が最初に登場するところを引用。「自分の帽子と蝙蝠傘を、大荷物のようにもてあましている風だった。・・・帽子が絨毯に転がり落ち、重い蝙蝠傘が膝の間をすべってドスンと音を立てた。持ち主は手を伸ばして片方を追い、身をかがめてもう片方を拾おうとしながら、真ん丸い顔に変わらぬ微笑を浮かべて、・・・」ユーモラスな神父さんがおそるべき推理力で事件を解決する。
(南條竹則/坂本あおい訳 ちくま文庫 760円+税)