シャルロッテ・リンク『姉妹の家 上下』(3)

バルバラとラルフは家にあるわずかな食べ物で数日を過ごした。ラルフは薪を割りバルバラはフランシスの自伝を夢中で読んでいる。夜はふだんの生活と同じように別々の寝室で眠っている。

自伝の続き:第一次大戦で心に傷を負ったジョージは孤独に一人で暮らしはじめた。アリスは回復を待つのに疲れてロンドンに帰り、旧知の男と結婚する。すでに婦人参政権運動を闘った闘士の面影はない。
第二次大戦でドイツ軍によるロンドン空爆がはじまり、アリスは二人の娘を疎開させようとフランシスに頼む。父親のチャールズが亡くなり、ジョンと別れてもどったヴィクトリア、昔からいる家政婦のアデライン、そしてアリスの娘のローラとマージョリーの女性ばかりの5人家族になる。その上にフランスからきたマルグリットがヴィクトリアのフランス語教師としてしばしば訪れるようになる。
一波乱も二波乱も、フランシスには恋も波乱もやってくる。

電話だけが通じるようになりローラから心配の電話がかかる。次に電気が回復して寒さからは逃れることができた。ラルフはスキーで買い物に出かける。夜になるとバルバラは屋敷中の灯りをつけてラルフの帰りを待つ。ラルフは帰らず、訪れたのは再婚したジョン・リーとマルグリットの間に生まれた当主のフェルナンだった。彼が持ってきた食べ物と酒でバルバラは生気を取り戻す。
最後まで自伝を読んで屋敷のすべてを知ったバルバラは危ない存在になっていた。

道に迷って農家に助けてもらったラルフが食糧を持って翌日もどってきた。電話の様子で心配になったローラはロンドンを発ち、列車とバスで来られるところまで乗り継ぎ、あとは歩いてたどり着いた。
(園田みどり訳 集英社文庫 上 905円+税 下 876円+税)