スティーブン・フリアーズ監督『がんばれ、リアム』

「がんばれ、リアム」(2000)は「マイ・ビューティフル・ランドレット」「プリック・アップ」「グリフターズ/詐欺師たち」「ハイロー・カントリー」のスティーブン・フリアーズ監督。タイトルの感じで軽い作品かなと思って見出したらなんとなんと重くて苦しいものであった。

1930年代はじめのリバプールの大晦日の夜、街ではカウントダウンがはじまった。
リアム(アンソニー・ボロウズ)の両親(イアン・ハートとクレア・ハケット)たちも近所のパブで人々に混じって陽気に飲み歌っていた。リアムと姉は親には内緒でその様子を見に外まで出て、見つかりそうになると寝室のガラス窓越しに眺める。
4人家族は仲良く暮らしていたが時代はだんだん暗くなっていく。父が働いていた造船所が不況で閉鎖され失業する。兄はようやく新しく仕事につくことができた。姉は金持ちのユダヤ人の家庭で家政婦として働きはじめる。仕事先で余った肉を持って帰ると誇り高い母は娘を叱りつけ捨てさせる。機転の利く娘は雇い主に気に入られているが、夫人の不倫に嫌悪感を持っている。

イギリス人だけどカトリックの一家で母は特に信仰深く、お金がないのに教会に献金しようと食費の箱からお金を出して父と衝突する。リアムに質屋へ服を持って行かせることもある。リアムは借りたい金額を唱えながら一生懸命に走って行く。
リアムは困ったときや嘘を言わねばならないときに吃音になってしまう。そのため教師や神父に手のひらを叩かれる罰を受けることもしばしば。
母が湯を浴びている裸の姿を見てリアムは驚く。学校で見た名画集には陰毛のある女性はいない。彼は深く悩み懺悔する。
母はリアムの聖体拝領の儀式のために借金してリアムの服装を整えてやる。姉が雇い主にもらったドレスも売る。(最近読んだグレアム・グリーンとイーヴリン・ウォーの作品がイギリス人だけどカトリックの信仰が主題だったので、教会や儀式や懺悔など興味深く見た。)

そういう生活の果てに父はお金がないのも仕事がなくなったのも搾取するユダヤ人と仕事を盗ったアイルランド人のせいだと憎しみをますます強くし、ファシストへの道を歩み始める。
暗澹たる結末。明日の展望がない一家の明日はどうなる。