ダニー・ボイル監督『スラムドッグ$ミリオネア』

映画に関心をなくしていた時間が長かったのはなぜか自分でも不思議だ。ダニー・ボイル監督の作品は「トレインスポッティング」(1996)しか見ていなかった。
「スラムドッグ$ミリオネア」(2008)は2008年と2009年(アカデミー賞7部門)の世界中の映画賞を独占しているのに、全然関心がなかった。いまもアカデミー賞がどうとか気にしないほうだが、この作品に関心を寄せなかったのはひどいねと自分に呆れている。

インドのスラム街で生まれ育ち、母を殺されたサリームとジャマール兄弟は逞しく生きている。混沌の中で知り合ったというより拾った少女ラティカと3人組で浮浪の生活をしていたが、マフィアにつかまって物乞いさせられたりしている暮らしから逃げ出す。兄弟は汽車に飛び乗れたがラティカは一瞬遅れて再びマフィアの手におちる。

青年になったジャマールは電話局で給仕をしているが、テレビの有名番組「クイズ$ミリオネア」に出ることになり、解答がどんどん当っていく。その解答ごとにジャマールの生い立ちが重ねられて、解答のヒントになるのがわかる。教育のない青年がどんな不正をしているのか警察に連れて行かれ、ひどい拷問を受けるが耐えきり、最後は警部が納得する。
マフィアの手下になった兄のサリームはジャマールのラティカへの愛を捨てさせようとするが、ジャマールは想い続ける。

重い内容なのに暗くなく、観光客をだましてお金を稼ぐ逞しさ、ふてぶてしさもいい。
最後の駅のプラットホームのダンスがインド映画っぽくてよかった。