ミス・リード『ドリー先生の歳月』

たくさんいただいた本の中の単行本2冊がミス・リードの本だった。名前を聞いたことがあるという程度の知識しかなかったのでありがたい。
「ミス・リード・コレクション」と名付けられた7冊の本をみんな欲しかったと2冊読んだところで思う(笑)。いえいえ、いただいた2冊で充分にイギリスの田舎の生活がわかります。

去年レジナルド・ヒルさんがお亡くなりになった。彼の作品を読んでいると、古き良きイギリス(ヨークシャー)を愛していた人だったと思う。いまのイギリスになくなりつつある人間味やウィットが充満している彼の本の中でも「異人館」と「完璧な絵画」の田舎は最高だ。
図書館で年末に「異人館」を借りてきて再読し、これは買って持っていようと思った。
のどかな田舎に警官が入り込んだり(完璧な絵画)、オーストラリアとスペインから自分の過去を調べにきたり(異人館)と、外からの風や光があたって、田舎の風物が輝く。みんなそれぞれ過去があったのが明らかになり、愛も甦る。
まあ、いわば、お伽噺のような世界で、だから好きなんだけど。

「ドリー先生の歳月」では、ドリー先生が生まれてからいろいろなことに出合いつつ教師を続け、ついに教師を辞めて田園生活を楽しむところまでを、率直にまっすぐに書いている。
ミス・リードの語りは率直で、咲いている花、実っている実、そよぐ風、小川の流れ、洗濯物など田舎の家のあれこれが語られる。

ドリーの父フランシスは屋根葺き職人で母のメリーと姉のエイダがいた。
町の南に沼地があって貧乏な人たちが住んでいた。ドリーたちはそこより少しましなところに住んでいた。わずかなお金でどうやって家族を養っていくかよりも、どうしたら自分たちの窮状を身近な人たちに隠しておけるかと苦労する人が多かったがドリーの両親も同じくだった。

1888年に生まれたドリーは人形のエミリーをいつも抱いていて祖父母にも愛されて育った。のちに出会った生涯の友がエミリー。
知り合いからの紹介で一軒家を借りられることになって一家は喜ぶ。
その家で大きくなり、教師となり、恋をする。村人に信頼されている。この家で子ども時代からの友エミリーと暮らそうと決める。
(中村妙子訳 発行:日向房 発売:星雲社 1999年 2000円+税)