ジョン・フォード監督「駅馬車」(1939)

こどものころの夏は夜になると父親を囲んで縁台に座って星を見たり、しゃべったりしたものだ。同じことを何度も聞かされてうんざりしたが「駅馬車」と「暗黒街の顔役」が素晴らしい映画だということを叩き込まれて育った。父親の青春時代の記憶だったんだろう。
その父親が100歳を過ぎて施設に入った時に、施設内で映画を見せてくれたそうだ。なにかご希望はと聞かれて、父は「駅馬車」と叫び、見せていただいたそうである。きっとあの主題曲も口ずさんだことだろう。

わたしが「駅馬車」をテレビではじめて見たとき、期待が大きすぎて少しがっかりしたように覚えているが、今夜見たらなかなかよくできた映画だと思った。レーザーディスクを買ってがっかりした「暗黒街の顔役」もいま見たらいいと思うかもしれない。

リンゴ・キッドのジョン・ウェインが若くて美しい。ジーンズの後ろ姿も前姿も美しい。ダラス役のクレア・トレヴァーもよかった。「キー・ラーゴ」でアカデミー助演女優賞をもらっているが、映画は見たのに覚えていなくて残念。
飲んだくれの医者ブーン(トーマス・ミッチェル)、賭博師ハットフィールド(ジョン・キャラダイン)も癖のあるいい味を出しているし、その他の俳優がみんないい。