クルト・ヴァランダー刑事シリーズの8作目(シリーズ番外編が1冊あり)で今年の9月に刊行された。ヴァランダー刑事と部下たちはコンピュータを使った不気味な殺人事件にいどむ。
男は夜の散歩に出る。ATMでキャッシュカードを差し込み明細書を手にするまでは予定通りだった。ところが突然予測していないことが起こる。男は道路に倒れた。
ヴァランダーは葬式に出て警察署に戻ってきてファイルを読む。19歳と14歳の少女がタクシー運転手を襲った事件、二人の少女ソニャとエヴァはレストランでタクシーを呼び、走行中に車を止めさせ、ハンマーで運転手の頭を殴った。もう一人がナイフを出して胸を刺し、財布を盗って姿を消した。二人はすぐに見つかって逮捕された。ヴァランダーには少女が金を欲しさに人を殴って殺すなんて理解できない。部下のアン=ブリットは犯罪者の年齢が下がっていると言う。
【「よく考えればわかると思いますよ。少女たちはしだいに自分のおかれた状況が見えてきたんです。自分たちは必要とされていないだけでなく、歓迎されていないということが。それで暴れるんです。男の子たちと同じですよ。暴力を振るうのは、現状への反発なんです」】
そのあとマーティンソン刑事がきて昨夜のATMの前に倒れていた男の報告をする。男はITコンサルト会社の経営者ファルクだった。調べた結果、自然死と処理されたのだが、あとから医師が訪ねてきて健康体なので自然死のはずがないと意見を述べる。
ソニャがちょっとした隙に逃亡する。トイレに行った彼女は堂々と正面玄関から出て行った。
エヴァの取調中にヴァランダーはあまりの少女の態度に腹を立て、彼女が一緒にいた母親を殴って「くそばばあ出て行け」と叫んだとき、思わずエヴァを殴った。その瞬間を入り込んでいたカメラマンに撮られてしまう。その写真は少女を殴った暴力警官として大々的に新聞に出た。
(柳沢由美子訳 創元推理文庫 上下とも1200円+税)