1999年にオスカー・ワイルドの没後100年を記念して制作されたイギリス映画で、ワイルドの「理想の夫」が原作。19世紀末のロンドン社交界を舞台に愛と結婚と理想について華麗に描いている。ちょうどドロシー・L・セイヤーズの時代と重なっていて、アーサー・ゴーリング卿(ルパート・エヴェレット)はピーター・ウィンジィ卿に似たところがある。本心は真面目なのに軽薄なそぶりで独身を謳歌している。ただし執事が老人でバンターのように気が利かなくて、そこがストーリーの鍵になっている。
ガートルード(ケイト・ブランシェット)と国会議員の夫ロバート(ジェレミー・ノーサム)は愛し合っている夫婦で、ガートルートは婦人参政権運動をしている。ロバートは官僚として働いていたときに内部情報をもらしたことがあり、そのときの手紙を昔の知り合いチーヴリー夫人(ジュリアン・ムーア)が握っていて強請られる。彼が意見を変えれば株価が変わる。自分の正しいと思う意見を議会で演説するか、チーヴリー夫人に強制された反対意見に変えるか苦悩するロバート。
チーヴリー夫人は貧しいところから這い上がり、つきあっていたゴーリング卿を袖にして、ウィーンのもっと金持ちと結婚した。ガートルードからははっきりとつきあいたくないと言われる。
ロバートの妹のメイベルはガートルードよりも器量も愛想も悪いが、ゴーリング卿を想っていて最後に愛していると言われてよかった。
「高慢と偏見」のエリザベスの血を引くガードルードやメイベルのいきいきした考えや言葉がいまにも通じる。