マイケル・カニンガム『この世の果ての家』

7月末に届いたマイケル・カニンガム『この世の果ての家』(角川文庫)をようやく読み終えた。572ページもある厚い本でしかもものすごく文字が小さい。おもしろいから読み終えたけど、理屈っぽいのなら途中でやめてるか最初から読まないかだ。
マイケル・カニンガムの本はとっても素敵な『めぐりあう時間たち』1冊しか読んでなかったが、本書も繊細な上に物語を書く才能に恵まれている感じで先へ先へと読み進んだ。本のカバーにある著者の写真を見ると、感じが『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』からはじまるビフォア3部作の主人公、イーサン・ホーク演じるアメリカ人の作家に似ている。
発表されたのは1990年、日本で翻訳出版されたのは1992年、文庫化が2003年。2004年にアメリカで映画化され、日本でのタイトルは『イノセント・ラブ』。

60年代から70年代のオハイオ州クリーブランド、ボビーとジョナサンのちょっと変わった二人の少年が親しくなる。ジョナサンの父親は町に映画館を持っており、母アリスは専業主婦である。二人はいつもいっしょにジョナサンの部屋で過ごす。音楽とクスリをやっているうちに自然に抱き合う二人。音楽を三人でいっしょに聞くところまでいって、ついに二人の関係を知ってしまう母アリス。

大人になった二人は違う道を歩むようになり、ジョナサンはニューヨークへ。ボビーはアリスにパン作りを習い料理の腕を磨く。そこまでが長くて(いやではないが)、ニューヨークへ行ったあたりからおもしろくなる。ジョナサンは新聞にコラム記事を書くようになった。ボビーがニューヨークへ出てきて転がり込む。ジョナサンはクレアという一回り上の女性と性関係なく住んでいて、ボビーを加えて3人家族となる。
ジョナサンはバーでバーテンダーのエリックと知り合う。

物語はジョナサン、ボビー、アリス、クレアそれぞれの語りで進んでいく。ちょっと面倒くさい最初から、大人になって食べていけるのかしらと心配になるし、えっ、どうするの?と出産におどろき、お金がうまい具合に入って食べ物商売が順調、しかし一人がエイズに襲われるし、出て行く者は出て行く。

映画では大人になったボビーをコリン・ファレル 、ジョナサンをダラス・ロバーツ、クレアをロビン・ライト、母アリスをシシー・スペイセクが演じている。そのうち見よう。もともとロビン・ライトつながりで知った本なんだから。

(飛田野裕子訳 角川文庫 857円+税)