サラ・パレツキー「アンサンブル」(2)

全部読み終わったのだが、やっぱりはじめて読んだ「V・I・ウォーショースキー最初の事件」のインパクトが強かった。
最初の事件と聞けば、私立探偵になって最初に引き受けた事件のことかなと思うよね。そこはヴィクのこと、栴檀は双葉より芳しくて子ども時代の話なんである。懐かしのいとこブーム・ブームが出てくる。ヴィクトリアはいとこからトリと呼ばれている。ふたりはお金を払わずにリグレー球場に忍び込んだり自転車で遠出したりして仲が良い。だが、夫が兄弟どうしのブーム・ブームの母のマリーとトリの母のガブリエラは真っ向から意見が対立している。キリスト教に忠実なマリーと自由を愛するガブリエラ。

1966年、父親のウォーショースキー巡査はキング牧師のデモ行進があるため、三日連続で勤務している。この夏はデモや暴動がすでに何回もあり、サウス・サイドに住む白人たちはキング牧師たちに本来の居場所であるミシシッピーなどにとどまるべきだと教えるために全力をあげようと誓っていた。

父の兄弟の事件とデモの騒動がからんでシカゴの街が大荒れの中、父トニーを殺すという言葉を聞いたトリは父を探そうと自転車で走り出す。ブーム・ブームは母につかまって追えない。
父からプレゼントされたカメラで悪いヤツを写しておくし、推理は働くし私立探偵の素質充分のヴィク。しかもワルたちに車のトランクに放り込まれて放置されるが、探しにきたブーム・ブームに助けられる。
毎度おなじみのボビー・マロリーだってまだ若い。そしてヴィクをヴィッキーと呼んで読者を喜ばせる(笑)。
(山本やよい訳 ハヤカワ文庫 900円+税)