ディアーヌ・キュリスの映画「サガン ー悲しみよ こんにちはー」を見たらあまりにもよかったので、キュリス監督の20年前の映画「ア・マン・イン・ラブ」を見直したり、サガンの作品でいちばん好きな「一年ののち」を読み返したりした。
次に本書「私自身のための優しい回想」を買って読んだのだが、サガン大好きが復活して、ここ数日はサガンに明け暮れる日々である。
この本を読んだのははじめてでおもしろかった。さまざまな著名人(ビリー・ホリデイ、テネシー・ウィリアムズ、オーソン・ウェルズ、ルドルフ・ヌレエフ、サルトル)と会いに行って話したりつきあったした印象を書いた文章のほかに、賭博、スピード、芝居、サントロペ、愛読書の項目がある。
著名人が著名人に会いに行って気が合い話が合って、これ以上のことはない記録なのでおもしろくないはずがない。
わたしはヌレエフ本人が踊る舞台は見たことがないが、映画になったのは何度も見た。(記録映画みたいに舞台を写した映画を厚生年金会館ホールなどで興奮して見た思い出があるし、レーザーディスクもいろいろ買っていた。)そのヌレエフにアムステルダムまで会いに行って3日間稽古を見て話す。ヌレエフの孤独やこどもっぽさがサガンらしい筆で書いてあっていい感じだ。
以上のインタビューや回想もよかったけど、わたしがいちばん興味ふかく読んだのは「賭博」と「スピード」だ。両方ともわたしとはいちばん遠いところにある。でも、おもしろかった。賭博とスピードに入れあげたサガンがああいう小説や芝居を書いたのだ。
(朝吹三吉訳 新潮社 1986年)