田山花袋『蒲団』

中学生の夏休みに一度読んだだけの本を青空文庫で読んだ。読みたい作品をiPad miniに入れてもらったのですごく読みやすい。
家には日本文学全集があって手当り次第に読んでいた夏休み。貧乏人の子沢山だからどこかへ行くということもなく、働きに行く者は行き、学校へ行ってる者は家事や母の内職の手伝いをした。弟は毎日自転車で仲間と遊びに出かけてた。わたしは家にある本を片っ端から読んでいた。

いちばんよく覚えているのは何度も読んだ『ジェーン・エア』で、これは一生の愛読書となった。漱石全集もそのころから読んでいた。文学全集の中に入っていたのに名前を忘れてしまった作家もたくさんいる。都会で学んでいた男子が病気して田舎に帰った話とか悲しい物語もあったが、作品名も作家名も忘れてしまった。

田山花袋の『蒲団』だって作家名と作品名のほか、いちばん最後の一節、作家が「蒲団にくるまって女の匂いを嗅ぎ、びろうどの襟に顔を埋めて泣いた。」ってとこ、いまだに覚えているところをみると、性的なものを感じたのね。親きょうだいにも言わなかったもんね。胸にしまい込んで(笑)。
いま読んだら、思いこんでいたより真面目な小説だった。私小説の代表みたいに言われているのも納得なのであった。