ガルシア=アギレーラ『5万ドルの赤ちゃん』

4月にメールをくださったTさんがわたしが知らない女性探偵の本とお勧め本を貸してくださった。
女性探偵ものは、C・ガルシア=アギレーラ「5万ドルの赤ちゃん」、ステラ・ダフィ「カレンダー・ガール」、キャロル・リーア・ベンジャミン「バセンジーは哀しみの犬」、 ジェニー・サイラー「ハード・アイス」、カレン・キエフスキー「キャット・ウォーク」 の5冊。

C・ガルシア=アギレーラ「5万ドルの赤ちゃん」から読み出した。
1996年に書かれ、日本語の翻訳が出たのは1997年で女性探偵もの全盛時代だ。女性探偵がたくさんいすぎて気がつかなかったのか、ハヤカワ文庫と創元推理文庫でなかったからか。
マイアミの女性探偵ループ・ソラーノは28歳で探偵事務所をもっている。探偵になりたいと目標を決めてから、大学をちゃんと卒業し探偵事務所で修行してお嬢様らしからぬ準備をし、いまは父親に出資してもらったお金の返済を済ませている。

彼女の一家はマイアミに住んでいるキューバ系アメリカ人である。キューバ革命のときに一家はアメリカに亡命した。父親の願いはただ一つカストロの死である。わたしはいまごろになって本書で10数年前のマイアミに住むキューバ人のことを知ったわけだ。たくさんの反カストロ派のことや亡命した人たちがいることは知っていたが、本書で現実を生きている人の姿が具体的に見えた。

ソラーノ事務所ではいとこのレオナルドを助手に雇っているが、彼の気持ちは体を鍛えることに向いていて、自分の部屋にいろんな器具を持ち込んで肉体美の維持に励んでいる。
ある日、富裕な夫婦がやってきて自分たちの子どもの親を捜してほしいと頼む。子どもがいない夫婦がお金で養子を得たのだが、その子が病気で実の母親の骨髄を移植しないと死んでしまうという。子どもの母親を捜し出すまでのループの活躍が描かれている。
お酒と男が好き。結婚で縛られないで自由につきあっている男といい関係を保っている。
(加藤洋子訳 新潮文庫 590円+税)