エドワード・D・ホック『怪盗ニック全仕事 1』

エドワード・D・ホックの人気シリーズ、全仕事というタイトルの「1」だから続きがあると思うとうれしい。木村さんの訳した本はていねいな解説があって楽しい。今回も巻末に87篇のタイトルがずらりと並んで解説あり。「改訳」「新訳」「初訳」とあるんだけど、もちろんすべて順番に従って読んでいくつもり。

エドワード・D・ホックのシリーズは「怪盗ニック」「サム・ホーソーンの事件簿」「サイモン・アークの事件簿」と三つあって、それぞれがおもしろくて好きだ。ホックは生涯に950篇以上書いている短編小説の名手である。
当ブログに三つのシリーズの感想を書いています。

ニック・ヴェルベットは、イタリア系アメリカ人がグリニッジ・ヴィレッジでまだ優位を占めていた頃に生まれた。チーズの名前のような本名を縮めて、他の多くの高校中退者と一緒に朝鮮戦争に行った。40歳近い今はある分野での自他ともに認める専門家(特殊な泥棒)である。お金や宝石には手を出さない。自分のためにも盗まない。一度は、監督やコーチや野球用具一式を含めた大リーグのチームをそっくり盗んだことがある。
報酬は充分(一件2万ドル、動物なら3万ドル)で年に四・五回働くだけだし、一仕事するのに一週間もかからない。ガールフレンドのグロリアと仲良く静かに暮らしている。グロリアはニックが泥棒であることを知らない。旅行していろんな会社の新しい用地を見つける仕事だというのを信じている。
そういう説明のある最初の仕事(泥棒)は「斑(まだら)の虎を盗め」で、動物園で虎を盗む。次の依頼はプールの水で、その後は真鍮の文字、湖の怪獣、囚人のカレンダーといろいろ。
(木村二郎訳 創元推理文庫 1160円+税)